牛にアミノ酸飼料、温室ガス半減 肉質・増体も維持 去勢ホルで実用可 農研機構
農水省の政策方針「みどりの食料システム戦略」は、畜産分野でも温室効果ガス排出量の削減を掲げる。肉用牛の生産で出る温室効果ガスは、げっぷに由来するメタンに次ぎ、ふん尿の処理過程で出る亜酸化窒素が多い。亜酸化窒素は二酸化炭素(CO2)の298倍の温室効果がある。
この排出量を削減するため、同機構は発生要因となるタンパク質を抑えた配合飼料を設計した。タンパク質含有量が多い大豆かすの一部を、トウモロコシにアミノ酸のリジンとメチオニンを加えたものに置き換え。「アミノ酸バランス飼料」として試験生産した。
この飼料を、栃木県畜産酪農研究センターでホルスタイン種の去勢牛に給与した。ふんを堆肥化する期間の64日で排出された温室効果ガスは、4頭分・CO2換算で339キロ。従来の飼料を与えた場合に比べ、半減した。
生産性への影響を調べるため、栃木県大田原市の前田牧場でも試験給与した。ホルスタイン種の去勢牛で実証し、増体や肉質に大きな差はなく、牛の嗜好(しこう)性も変わらなかった。
同機構の試算によると、アミノ酸飼料と従来の飼料の原料価格はほぼ同じだった。同牧場では、アミノ酸飼料を与えた牛肉を「地球にやさしいお肉」として価格を2割ほど高く設定して販売。環境に配慮する消費者が注目し、売れ行きは順調だったという。同牧場の齋藤順子取締役は「持続可能な畜産の実現のためには必要な一歩」として、今後も継続する考えだ。同機構は、黒毛和種などでも利用できるか研究を進める。