米バイデン政権2年目へ 気候変動対策に意欲 牛肉SGの行方は?
バイデン氏は就任直後から気候変動への対応を優先課題に掲げ、温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」に復帰。昨年4月には2030年の米国の温室効果ガス排出量を05年比で50~52%減とする意欲的な目標を示した。
こうした政権の方針は農業分野でも具体化させている。温室効果ガスの一種「メタン」排出量は、30年までに3割削減を表明。昨年11月には、日本を含む31カ国が参加する農業の技術革新を図る国際枠組みの設立を主導。メタン排出源の牛のげっぷ抑制といった技術への投資を強化する方針などを示した。
だが、大統領選で公約として掲げた、農地での二酸化炭素(CO2)吸収に取り組む農家への交付金の直接支払いを含む大型の歳出法案は成立の見込みが立っていない。物価高や新型コロナウイルス禍などを背景に支持率も下落が続いており、11月の中間選挙を前に、正念場にある。
環太平洋連携協定(TPP)や、日米貿易協定などを巡る動きは乏しい。米通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表は、昨年11月の初来日時に一部メディアに対し、TPPについて「5年以上も前の署名だ」と発言するなど、復帰に消極的な姿勢を鮮明にした。日本と設置で合意した新たな経済協議の枠組みも、日米協定で課題となる自動車関税の協議など「通商交渉の場とはならない見通し」(日本の外交筋)との声がある。
一方、注視が必要なのが、同協定で日本が米国産牛肉に設けるSGの見直し協議だ。昨年3月のSG発動を受け、関税引き上げの発動基準となる輸入数量の見直し協議が日米間で続いている。基準数量は年度ごとに増える仕組みで、現状の合意では、21~27年度は毎年度4840トンずつ増える。「来年度からの基準数量の引き上げ幅を上積みしようと、米国が協議を急ぐ可能性がある。年度末に向けた協議が焦点になる」(日本の交渉筋)との見方が広がっている。