トウモロコシ増産 飼料国産化の支援拡充を
飼料の自給率は2019年度が25%で、濃厚飼料は12%にとどまる。濃厚飼料となる飼料用米は米政策での支援があり増加したが、それでも16年産の生産量51万トン(9万1000ヘクタール)がピークで、20年産は38万トン(7万1000ヘクタール)と近年は伸び悩む。
濃厚飼料の増産には一段のてこ入れが必要だ。20年度からの酪農肉用牛近代化基本方針(酪肉近)でも重要課題に挙げる。また、農水省が農政の大きな柱に加えた、環境にやさしい農業を目指す「みどりの食料システム戦略」を受け、同省の「持続的な畜産物生産の在り方検討会」が、畜産で輸入飼料への過度な依存からの脱却を目指す方向を改めて示した。
同検討会の6月の中間取りまとめでは、輸入飼料への過度な依存は、窒素・リンの過多といった環境負荷や、価格変動や長期的な供給不安などのリスクがあると指摘。自給飼料生産や良質堆肥の生産・広域流通、耕種農家との連携による資源循環が重要だと強調した。肉用牛の増頭推進などにより飼料の需要が増え、リスクがさらに高まる恐れがある。対応が急がれる。
国産の濃厚飼料として注目が高まりつつあるのが、子実用トウモロコシだ。トウモロコシは、配合・混合飼料原料の49%(19年度)を占め、最も増産が求められる。同省の調べでは08年ごろから試行的に栽培が始まり、19年の作付面積は610ヘクタール。栽培上の長所と課題が見えてきた。最大の長所は労働時間が少ないことで、10アール当たり1・2時間。水稲の20分の1で済む。 収益性は個別事例でばらつきがあり、JA全中の試算では10アール当たり5000円程度の赤字だ。この試算には、水田活用の支直接支払交付金の戦略作物助成(10アール3万5000円)と、20年度から子実用トウモロコシを助成対象にした水田農業高収益化推進助成(同1万円)を含む。ただ、麦や大豆には出る畑作物の直接支払交付金(ゲタ)はなく、全中はゲタの対象に加えるなど一層の支援拡充を検討するよう求めている。
子実用トウモロコシを水田転作の新しい作物として育てるには、安定した収益が見通せることが欠かせない。ゲタの対象に加われば、畑作でも生産の拡大に勢いが付く。畜産の長年の課題だった濃厚飼料の増産を進めるためにも、支援拡充の具体策を政府・与党はしっかり検討すべきだ。