[論説]ドローン物流の未来 買い物支援 安全が鍵に
人口約2000人の徳島県佐那河内村は11月中旬から、ドローンを使った買い物代行サービスを始めた。同村は中山間地に位置し、高齢化率は48%。徳島市に隣接するが、高齢のため免許を返納して運転をやめたり、マイカーを持っていなかったりと「買い物弱者」は増える一方だ。
同村の買い物代行サービスは、住民が村内の商店やコンビニの商品チラシから購入したい品を選び、電話で注文するシステム。配送拠点から、公園や空き地などの着陸地点15カ所までの道のりを事前に設定。ドローンを操作し、注文者の家に近い着陸地点で商品を置く。住宅までは、サービスを運営する会社の従業員が車で届ける仕組みだ。
商品代金の他、10%のサービス料と運送料300円が必要で、利用者が商品の受け取り時に支払う。直接、商店で買い物をするより割高になるが、利便性が高まり、高齢化が進む地域の住民には喜ばれている。こうしたサービスを各地に広げることで、農山村で暮らせる基盤が整う。
農水省が、全国1741の市町村で行った調査(2021年)によると、高齢化や店舗の廃業などで食料品を買えない「買い物弱者」への対策が必要と回答した市町村は、86%に上った。特に人口5万人未満の小規模な市町村では90%に達し、ドローンによる物流支援は待ったなしだ。
日本郵便は、東京都奥多摩町の山間部で自動で飛行するドローンを使った荷物の配達試験を行った。ドローンから雑貨の入った箱をつるして、郵便局から2キロ離れた民家の庭まで運んだ。職員がバイクなどで配達する場合と比べ、半分の時間で済んだという。
国土交通省は昨年12月、目視なしの無人運転で住民や通行人がいる地域を飛ぶ「レベル4飛行」を解禁。ドローンを山間部や離島で飛ばす際、監視のための人員配置を不要とする規制緩和策を年内に実施する方針だ。
課題は、ドローンが風にあおられ荷物などが破損したり、電波状況で墜落したりする恐れがあることだ。事故につながりかねず、普及には安全対策の強化が欠かせない。
ドローンによる物流は、中山間地域を中心に、陸上輸送に代わる手段として期待がかかる一方、安全を担保することが実用化への鍵となる。住み続けられる農山村へ、行政の後押しも求められている。