[論説]年末年始の家畜防疫 観光客の急増に警戒を
日本政府観光局がまとめた訪日外国人旅行者数(推計)によると11月は240万人と、6カ月連続で200万人を超えた。韓国などアジア圏の他、米国やメキシコ、イタリアなど13の国と地域で過去最高を記録した。累計2233万人と、前年同期に比べて9倍もの外国人が訪れている。
大手旅行会社のJTBは20日、24年の訪日客は3310万人と、19年の3188万人を上回り過去最高となる見通しを公表した。コロナ禍の行動制限が終了したことなどで、世界中で人の移動が活発になっている。円安が続き、日本観光に割安感があることなども訪日を後押しする。
一方、懸念されるのがアジアを中心に家畜疾病の発生が相次いでいることだ。日本と台湾以外のアジア全域では、有効なワクチンがないアフリカ豚熱が確認されている。韓国では12月に入って野生イノシシで同病の発生が確認された。また韓国では5月、4年ぶりに牛で口蹄疫(こうていえき)が発生。国内への侵入を防ぐため、農水省は農場の出入り口に立ち入り禁止の看板を設置することや、発生地域への関係者の来訪を控えることを求めている。
この時期は、スキーやスノーボードなどのウインタースポーツを楽しむ外国人や、初日の出や自然を楽しもうと農山村に出かける人が増える。普段なら人や車の交通量が少ない農村部も、帰省で往来が活発になる可能性は高い。
ウイルスの侵入を防ごうと同省動物検疫所ホームページでは、日本語だけでなく英語や中国語、ハングル、タガログ語、ベトナム語など多様な言語でパンフレットやポスターを用意している。積極的に活用しよう。
外国人技能実習生に対しては、ほとんどの畜産物が手荷物や郵便で国内に持ち込めないことを繰り返し注意することが必要だ。悪質な場合は、家畜伝染病予防法に基づき罰金や逮捕の対象となる。一度侵入を許してしまえばいかに根絶が難しいかは、豚熱で実証済みだ。家畜疾病への危機感を今こそ共有したい。
気温が低くなると、消毒の効果が弱まる剤もある。国内外で人や物の移動が激しくなる時期だけに、空港などでの水際対策を徹底するとともに、畜舎の防疫対策をいま一度見直し、穏やかな年末年始を迎えよう。