日本農業新聞は、政府備蓄米を扱う国、集荷業者、米卸、小売業者について、備蓄米を販売する際に利益や経費として、いくら上乗せしているか試算した。上乗せ金額が最も大きいのは国で、小売業者、米卸の順だった。いずれも60キロ当たり9000円(税別)程度を上乗せし、備蓄米の店頭価格が下がらない一因になっていることが浮き彫りになった。一方、JA全農など集荷業者の上乗せ額は同1000円ほどで最小限に抑えている。
備蓄米は、国、集荷業者、卸売業者、小売業者という流れで販売される。今回本紙が試算したところ、最も上乗せ金額が大きいのは国だった。2023年産の場合、国が備蓄米を仕入れた価格は60キロ当たり1万1879円。4月27日までに集荷業者に販売した価格は同2万1085円で、上乗せ額は9206円だった。
次いで大きかったのは小売業者だ。農水省が公表した全国のスーパー店頭平均価格(5~11日)のブレンド米販売価格5キロ3606円を基に計算すると、60キロ当たりの販売価格は4万3272円。米卸から買った金額を差し引くと、上乗せ額は8910円という結果になった。
農水省の調査によると、22年ベースの経費は約3000円で、小売り段階でも利益をのせていると思われる。「売価を安くし過ぎると、売れ過ぎて在庫が持たない」(あるスーパー)として、価格を引き上げるケースもあるとみられる。
卸売業者の上乗せ額は8695円だった。22年ベースの経費は約2000円で、一定の利益を取っている計算だ。ただ、経費の大きな割合を占める輸送費は24年の物流改革やガソリン価格高騰で大きく上昇し、人件費も22年から伸びているという事情もある。
一方、JA全農など集荷業者の上乗せ額は1146円で最も小さかった。22年ベースの経費は1128円。上乗せ額はほとんどが経費で、利益を抑えている格好だ。
国は米価引き下げに向け、備蓄米の入札をこれまで3回行い、31万トンが落札され、流通も本格化しつつある。ただ、全国の店頭価格は上昇を続ける。このため同省は備蓄米の放出の方法について、現在の一般競争入札から、国が価格を決める随意契約に見直す。