[論説]再生可能エネルギー 鍵は地域との合意形成
再生可能エネルギーの発電設備の設置を規制する動きは、2012年の再エネ特措法の施行による「固定価格買取(FIT)制度」の導入がきっかけとなった。現在の買取単価は1キロワット時当たり10円程度まで下落しているが、当初はその4倍の同40円程度に設定された。この高い買取単価に引き寄せられるように、資金力のある事業者らが太陽光発電設備を急拡大。農山村の環境に影響を及ぼす不適切事例も頻発し、全国各地で地域住民や自治体とのあつれきを生んでいる。
一般財団法人地方自治研究機構のまとめによると、同エネルギー設備の設置を規制する地方自治体の条例制定は14年から始まり、ここ10年間で全国277の自治体にまで広がった。さらに、宮城県議会は23年7月、独自の課税条例を可決。24年4月から同県内で森林開発面積が0・5ヘクタールを超える太陽光・風力・バイオマス発電設備を設置する場合、事業者に課税する。税額は営業利益の約2割に相当する。
ただし、宮城県の条例は、0・5ヘクタール超であっても、課税対象にならない再生可能エネルギー発電設備の要件を明示している。共通しているのは、おろそかにされてきた「地域との合意形成」を重視している点だ。発電事業者に対し住民への丁寧な説明や対話、環境への配慮、そして何より当該地域がメリットを感じられる具体策を求めている。
課税条例には賛否があるだろうが、「地域との合意形成」を重視し、政策誘導している点は画期的だ。再生可能エネルギーの発電だけでは、地域への雇用創出効果も税収効果も限られるからだ。そうした中で、地域住民の合意を得ようとすれば、発電事業者には必然的に、基幹産業である農林水産業との相乗効果も含めて、地域の新たな経済循環を生み出す仕組みづくりが求められる。
岐阜県中津川市で長年、再生可能エネルギーの一つである小水力発電に取り組むブルーベリー農家の口田哲郎さん(89)は「作物と同じで、自分で生み出した電気はたまらなく愛おしい」(農文協「小さいエネルギーで暮らすコツ」)と述べている。
発電事業者との十分な話し合いを通じて、こうした思いを一人でも多くの地域住民が抱けるようになれば、再生可能エネルギーの普及は大きく進むに違いない。