[論説]地域おこし協力隊15年 活動支え定住拡大促せ
同協力隊は09年に活動を始めてから、隊員OB・OGを含めて約1万6000人が活動地域に移住した。任期後の定住率は約65%に上る。残り35%は「仕事がない」などを理由に地域を去っている。
同省は、隊員の定着率を高め、生き生きと活躍できるよう応募の前に地域での具体的な活動をイメージできる、「おためし」や「インターン」制度も用意した。
外国人の隊員も活躍している。22年度は151人に上り、同省はこうした流れを加速させようと24年度は希望する市町村側と、外国人隊員とのマッチング支援などを進める考えだ。性差や国籍を問わず「農山村を元気にしたい」という共通の思いを持った多様な人材の登用で、地域が活性化することを期待したい。
地域で隊員が孤立しないよう隊員のつながりも強くする必要がある。32道府県がOB・OGのネットワーク組織を立ち上げた。同省は「地域おこし協力隊全国ネットワークプラットフォーム」を開設、隊員の悩みや相談に応えられる体制づくりを進める。
隊員と地域が求めていることのミスマッチを防ぎ、スムーズな定住につなげる環境整備も欠かせない。4日に都内で開かれた全国サミットでも、任期を終えて地域に定住した元隊員や、協力隊の活動を支援する法人代表者らが現場の課題を指摘した。大きな課題として上がったのは、隊員がやりたいことと地域が求める活動が違うケースだ。
受け入れる市町村は、まず地域が何を求めているのかをくみとり、隊員の募集につなげることが重要だ。さらに「隊員の活動内容や、どのように地域を活性化させるのか、住民への説明が不足している」といった声も上がった。
隊員と住民が対立した際の調整役として自治体が担う役割も大きい。隊員を受け入れる自治体間で情報を共有したり、外部人材の登用を通して職員の意欲を引き出すなど、隊員の数を増やす前に、まずは自治体の人づくりを進める必要がある。隊員を孤立させないためにも自治体が、地域と隊員をつなぐコーディネーター役を果たすべきだ。
地域も変わらなくてはならない。少子高齢化に直面する高知県東洋町では「海の駅」駅長や観光協会事務局長などの要職を移住者に任せている。多様な協力隊の人材が活躍できる農山村をつくろう。