[論説]米粉の普及拡大 需要に応じた生産急げ
農水省が発表した2024年4月期(4~9月)の輸入小麦の政府売り渡し価格は、前期(23年10月期)比0・6%下げにとどまった。主産地の米国やロシアが豊作基調にあり、国際相場は下げ基調だが、円安や海上運賃の上昇が下げ幅を圧縮し、輸入小麦価格の高止まりは続きそうだ。
この状況を国産米粉の普及の好機としたい。輸入小麦との価格差は、商品によっては対等に勝負できる水準となっている。小麦アレルギーの人にとっても米粉はグルテンフリーで、もちもちとした食感や揚げ物のさくさく感、吸油率が低いなどの特徴があり、消費拡大のチャンスとなる。
国内の23年産米粉用米の生産量は約4万トンの見込み。うち新潟と福井、石川、富山の4県で36%を占める。主産地の新潟県では、08年度から小麦粉使用の1割を県産米粉に置き換える「R10プロジェクト」を展開する。東京都と連携協定を結ぶなど、米粉の活用と消費拡大に取り組む。他の産地でも製パン会社や、コンビニなどと連携し、普及を進めている。今後は、パンなどに使う乳化剤の代替となる米ピューレやアルファ化米粉に加え、グルテンフリー市場の一層の取り込みも必要だ。
課題は、需要に対し、供給が間に合わない点だ。同省によると23年度の国産米粉の需要見込みは約5・3万トンまで伸び、商品開発も活発になる中、米粉用米の生産が追い付いていない。24年度も6・4万トンを見込み、需要と生産量のギャップが拡大する恐れがある。同省は30年度の生産量目標13万トンを掲げており、専用品種の開発・導入・普及や加工体制の強化が欠かせない。
同省は、輸入小麦や大豆など価格高騰の影響を受ける農産加工業者を対象に、国産への切り替えを促そうと今国会に「特定農産加工業経営改善臨時措置法改正案」を提出し、成立を目指す。事業所税減免や日本政策金融公庫の長期低利融資などが受けられる。
米消費の減少が続く中で、24年産主食用米の適正生産量669万トンの達成が欠かせない。作付け意向の第1回調査結果(1月末時点)で、転作作物で米粉用米を含む新市場開拓用米が19道県で増加傾向となった。小麦の代替品だけでなく国産米粉そのものの魅力が広がれば、低迷する食料自給率の向上にもつながる。
高まる需要を取り逃すことがないよう、米粉パンや麺に適した品種なども導入し、生産を底上げしよう。