[論説]介護保険制度の改正 多様なケアで支えよう
2024年度の制度改正では、65歳以上で年間所得420万円以上の人の介護保険料を引き上げ、所得の低い人は引き下げた。個々の支払い能力に応じた「応能負担」を強化したことで保険料を増やし、公費を抑える狙いがある。
人材の確保策としては介護職員の給与を引き上げて、24年度に2・5%のベースアップを実施、25年度は2%とし、継続的な賃上げを目指す。
一方、懸案だった利用料の自己負担を2割(原則1割)に引き上げる対象者の拡大は見送りとなった。物価高などを背景に、高齢者の生活に配慮した格好だ。
所得に応じた「応能負担」の強化も、膨らみ続ける利用料を見ると抜本的な解決策には程遠い。全産業の平均給与より6万円以上低い介護職員の賃上げは必要不可欠だが、今春闘では他産業も賃上げ傾向にあり、格差はさほど縮まらないだろう。見送りとなった自己負担の見直しも、現役世代の負担感が増す中でずっと求められてきた議論であり、もはや先延ばしは難しい。
結果、24年度改正は小幅にとどまった感がある。ただ、団塊の世代が75歳以上になり切る「2025年問題」が控えており、急速に進む高齢社会への影響を注視しなければならない。3年ごとに改正する介護保険制度を一人一人が自分事と捉え、議論を深めていくべきだ。
超高齢社会に向けて、公的制度の持続とともに“民間の力”も結集させる必要がある。介護を必要とする人が求めているのは、自立した暮らしを手助けし、個人を尊重する支援だ。ケアの層を厚く細やかにする必要があり、公的サービスとボランティアら民間機関との連携が欠かせない。
JAは介護事業の他にも福祉事業を手がける。認知症サポーター、助け合い組織、女性、青年組織らがそれぞれ、認知症カフェや配食、健康体操や園芸など、介護予防となるボランティア活動を展開する。こうした活動と介護事業との連携を強化することで、多彩なケアが提供できる。
介護施設でJA女性組織がレクリエーションをしたり、組合員や青年組織が農作物を届けて交流したり。地域とのつながりを実感できれば、ケアが必要なお年寄りの気持ちを活気づけ、自立をも促すだろう。組合員・住民の健康を支えるのは、JAの使命の一つ。経済優先ではない協同組合の存在感を発揮しよう。