[論説]協力隊員7200人に JA、農家との連携強く
地域おこし協力隊は、国が2009年度に始めた地域活性化を請け負う若者たちのことを指す。隊員は、地域ブランドや地場産品の開発から販売、PRなどの支援、農林水産業への従事、住民支援など地域に寄り添う活動を通して定住、定着を目指す。
総務省によると、23年度の協力隊員数は前年度比753人増の7200人。3月末までに任期満了となった隊員は累計1万1123人と、1万人台を突破。活動した地域で定住した隊員のうち1割が就農した。同省は「任期後に就農したケースが最も多い。協力隊制度は就農の一つのルートとして定着した」とみる。
隊員の年齢構成は39歳以下が7割を占め、若者が農山村を志す田園回帰の流れが続く。若者たちが安心して地域で生活していけるよう、自治体は農業に加えて、なりわいづくりを後押しすべきだ。
任期を終え、直近5年で同一市町村に定住した4463人の隊員の進路で、最も多いのが「起業」の2048人(45・9%)。うち279人は古民家カフェや農家レストランなどの飲食サービス業で、農家民宿など宿泊業も198人だった。「就業」では農業法人なども目立ち、農的な暮らしを選択する隊員が多い。JAも積極的に隊員と関わり、若者の発想を取り入れたい。
国学院大学観光まちづくり学部の嵩和雄准教授によると、役場だけでなく民間企業などが隊員を受け入れる事例も目立ってきたという。ただ、単なる「人手不足の穴埋め」という考え方では、本来の協力隊の趣旨から外れる。嵩准教授は「とりあえず隊員を採用する地域と、仲間として受け入れる地域とでは、その後の定着率に差が生じている」と指摘。どんな地域にしたいのか、隊員に何を求めるのか、受け入れ側のビジョンを明確にする必要がある。
山梨県甲州市は、協力隊の制度を活用し、3年間で果樹の栽培技術を身に付ける「あぐりトレーニー(研修生)」を育成する。隊員は、JAフルーツ山梨の出資型法人あぐりフルーツに所属し、新規就農を目指す。JAの支援で、隊員は地域で孤立せずに技術や知識を習得できるという。
自治体だけではなくJAや地元住民など受け入れる側が、協力隊員とのつながりを深めることで、地域は元気になる。若い力を生かし、定住に向けた環境を整えよう。