[論説]食肉への消費者意識 若年層の国産離れ防げ
調査は日本中央競馬会の助成を受け、日本食肉消費総合センターが実施した。全国の20代から80代までの6000人が対象。飼料費が高騰し畜産経営が厳しい状況にある中、消費者の畜産現場に対する理解度はどの程度か、食肉価格の値上がりをどう捉えているかなどの意識を調べた。
肉を生産する際にかかる飼料費の割合を示したところ、「初めて知った」は全体の77%。若年層ほど「初めて知った」の割合が高く、20代では82%に上った。このほか、飼料の輸入割合の高さ、近年の飼料価格の高騰、国内の肉牛農家が減っている実態も、若年層になるほど、「初めて知った」の比率が高くなった。
飼料をはじめ食肉生産のコストは上がっているが、食肉の販売価格も上昇する。ただ、肉の小売価格に生産コストの上昇分の全て、もしくは一部が転嫁されている、と捉えている消費者は49%と半数近くを占めた。特に20代に限れば55%まで増えた。生産現場では畜産物への価格転嫁が進まず厳しい経営が続いている一方で、若年層に、そうした実態が正しく理解されていない可能性がある。
肉の売値にコスト分が転嫁されているかの問いに対し「よく分からない」との答えは、全体で20・3%だが、20代では26・3%と高いのも特徴。20代は畜産の現状について情報を入手できていない、関心がないとも言える。
肉を買う際は、高齢になるほど鮮度や産地を重視する比率が高くなるが、若年層は特に価格重視が大きい。今後、さらに価格が上がれば、消費者の目は一段と厳しくなると推測できる。どこで生産されたどんな肉かといった、商品が生産された背景より、目先の価格が購買行動を強く左右することになりかねない。
報告書では「若年層は食料の海外依存が進んだ状況下で育ってきた」とし、幼少時の環境を考え、国内の畜産や農業に「関心が薄くなってきているのかもしれない」とみる。「国産は安全・安心」という意識も、若年層ほど低い傾向にあるとしている。
20代は、今後、長期にわたって食肉を購入する層だ。日本の畜産の良き理解者として、息の長い国産のファンであってほしい。若年層の心に響くようなPR策を探り、国産を手に取りたくなるような働きかけが必要だ。年代に応じた訴求方法を考えたい。