鳥インフル続発 侵入防止と早期発見を
18県で52事例が発生し過去最悪の被害となった昨季や、9道県で発生した2016年度と同様、今季も11月に県を越えて3例以上発生している。また、16年度は野鳥などで22都道府県、218例の高病原性ウイルスを確認したが、それでも全て同じ型だった。
今季は、同じ市内で異なる型が確認された。野鳥では、他の地域で低病原性が見つかっている。家禽(かきん)が感染すれば、殺処分の対象となる。型が異なっても侵入防止対策は変わらないが、感染した鶏の病徴がわずかに異なる場合もある。
昨季のウイルスは高病原性にもかかわらず、感染から死亡までの日数が長いという特徴があった。病徴が異なれば、入念な観察がより重要になる。農場の鶏だけでなく、野鳥の感染状況など周辺の環境にも気を配ることも求められる。万が一、発見の遅れから通報が遅れ、農場でのウイルス量が増えることになれば、そこから外部に広がるリスクも高まる。
今季発生した4事例は全て採卵鶏農場で、今後の発生状況次第では鶏卵の需給への影響が懸念されている。
過去最大規模の昨季は、52事例の関連農場を含め75農場で殺処分が行われ、およそ半数の37が採卵鶏農場だった。殺処分された採卵鶏羽数は約900万羽になり、全国の飼養羽数の約5%に当たる。
この影響で鶏卵価格は今年3月以降、平年を上回って推移した。年末の需要期に向けては、生産現場の努力により、採卵鶏の羽数や大玉の量は回復傾向にあるとの見方が強い。このため鶏卵業界では、特に大規模農場での発生が起こった場合の需給への影響を危惧する。
海外の発生状況にも目配りが求められる。渡り鳥が日本に持ち込むウイルスと同様に、欧州でもシベリアからウイルスが広がる。このため日本でも、欧州の発生状況と同様の傾向になる可能性が指摘されているからだ。
農水省によると、欧州では昨季の20年10月から21年5月中旬までに19カ国の1248戸で高病原性の鳥インフルが発生。殺処分した家禽は約2240万羽で過去最大になった。今季も早い段階で欧州西側の英国でも家禽で発生が見られたことなどから、同省は多発の可能性があるとみる。
鶏のひなは欧州から輸入されていることもあり、その点でも注視が必要だ。