JA政策推進大会 肥料対策の具体化急げ
今回のJAグループの政策提案では、食料安保の強化を前面に打ち出した。背景には、新型コロナウイルス禍とロシアによるウクライナ侵攻などによる世界経済の不安定化で、食料供給を巡るリスクが現実化していることがある。肥料や飼料、燃油などの資材は原料の多くを輸入に依存。価格高騰の先行きは見通せず、現場への影響は計り知れない。食料自給率は過去最低の37%(カロリーベース)。国際相場に異変が起これば多くの食品に影響する。
政策提案で、JAグループは食料・農業・農村基本法の検証・見直しを含めた食料安全保障に関わる基本政策の確立を求めた。農林水産関係予算全体の増額を含めた「思い切った大胆な施策」を要望。
生産資材の安定供給に向け、配合飼料や燃油のようなセーフティーネット対策がない肥料について、価格高騰の影響緩和対策を提起した。肥料の価格安定対策は、対象となる農家が桁違いに多く、どうスピーディーに補助できるかが課題だ。耕畜連携を強化することで化学肥料の使用を減らし、喫緊の肥料高騰をどう乗り切るかが鍵となる。
与党も前向きに動く。自民党の食料安保に関する検討委員会は、既存の予算の枠組みとは別に「食料安全保障予算」を緊急・継続的に確保するよう求める。同委員会の森山裕委員長は「(参院選後に想定される補正予算に)肥料対策をしっかり位置付け、農家が再生産できる仕組みを作っていく」と述べた。
輸入依存度の高い小麦、大豆、飼料用トウモロコシなどの増産支援、保管・流通体制の整備も要望した。食料有事の今こそ、海外依存から脱却し、足元の資源をフル活用することで環境に優しく持続可能な農業につなげるべきだ。
全中の中家徹会長は「将来にわたって国民に食料を安定供給できるよう抜本的な取り組みとそれを後押しする政策の確立が必要だ」と訴えた。
予算確保や政策の実現には納税者である国民の理解も欠かせない。JAグループは、国民が必要とする食料をできるだけ国内で生産する「国消国産」を通し、命につながる食と農業への理解を促そう。
行き過ぎた価格競争の果てに、国内の生産基盤は脆弱(ぜいじゃく)化が進んだ。肥料をはじめとする万全な資材高騰対策とともに、地域農業を底上げする息の長い支援が求められている。