茂原市・中村啓吾さん

茂原市の中村啓吾さん(41)は、両親と共に長ネギを通年で195アール、他にもラッカセイや水稲を栽培している。両親が続けてきた農業を途絶えさせることがないように、後を継ぐことを決意した。2021年から農業を始め、現在4年目となる。
秋冬ネギの出荷が12月から本格的に始まり、毎日のように収穫と調製作業が続く。5月に収穫するビニールトンネルを使った作型のプレミアム夏ネギの定植作業も並行して行うため、年末まで忙しい日々を送る。
24年からは労働力確保のために農福連携の利用を始めた。主にネギやラッカセイの掘り取り作業などを依頼している。JAが一緒になって福祉事業所の職員と作業調整をすることで、スムーズに進み、今では頼りになる戦力となっている。
管内で栽培されているネギは「長生ねぎ」としてブランド化され、甘くておいしいと評判で、歴史も古くベテランの生産者も多い。地元の歴史あるネギを守るために努力を重ねている。
中村さんは「同じネギを栽培する生産者から褒められるとうれしい」と語り、それが一層の栽培意欲向上につながっている。
水稲では、近隣の若手農家と協力し合いながら地域農業の発展に精力的に取り組んでいる。「自分の住んでいる地域には後継者がいなく、作付けしていない圃場(ほじょう)がたくさんある。そういった農地を借りて規模拡大をしたい」と意気込んだ。
(JA長生特別通信員・渡辺舞)
南房総市・御子神裕樹さん

高校を卒業後に渡米し、ハワイでの研修でさまざまな野菜の栽培方法を学び、日本に戻り野菜の仲卸業を経験した後、2022年に父が代表を務める御子神農園で就農した。
現在、御子神さんは父親やスタッフと共に、食用ナバナを中心に35ヘクタール、トマトを0・5ヘクタール、ニガウリ(ゴーヤー)を1・8ヘクタールほど栽培しており、お客さんからの「御子神さんのナバナはおいしい。また食べたい」などの好意的な反応を励みとして、農業に対する魅力を実感しているところだ。
今後の目標は「生まれ育った故郷に恩返しをしたい。今、栽培している食用ナバナを精力的に取り組む。また、安房地域の特産品であるソラマメ栽培にも挑戦して、今以上の野菜産地にすることを目指している」と語る。
「父が道を切り開いてくれた食用ナバナの栽培の可能性を引き継ぎ、時代の変化に対応しつつも、今後も、故郷で大きな情熱を胸に農業のバトンを次世代に伝えたい」と笑顔で話した。
(JA安房特別通信員・諏訪優)
野田市・中野あずささん

東京都出身で農業とは無縁な環境で育った彼女は、人工知能(AI)の発展によって多くの仕事が失われる可能性に触れ、「食べ物だけはなくならない」という考えから農業の道に進むことを決めた。市のアドバイスを受け、専修学校での3カ月の学びを経て、都心から近い野田市に移住し、農業機械を購入して就農した。栽培品目はサツマイモに決定。決め手は、在学中に学んだ作物だったこと、データ分析からも収量や労働力のバランスが良いと判断した結果だった。
最初の1年は「まず販売できるサツマイモを栽培すること」に注力。その後、同じく食の重要性を考えていた弟の協力を得て農地を拡大し、助成金を使って加工所を購入した。
代々続く農家と差別化を進めるため、有機農業に着目し、2023年に有機JAS認証を取得した。有機農産物の受け皿が少ないことから、今後は加工の受け入れも視野に、有機農産物の価値向上を考えている。中野さんは「今後は、農業の道を選ぶ人を支援し、農家が利益を上げられるよう努めたい」と話す。
(JAちば東葛特別通信員・坂享恵)
成田市・輿正浩さん

栽培方法は水耕栽培で培地はロックウールと土のハイブリッド方式をとっており、ベストな比率を模索している。毎年気候の変化などで出来具合も変わるため、さまざまな試行錯誤をしており、うまくいった年は喜びもひとしおだそうだ。
イチゴ狩りの来場者数をあえて絞り、来場者と会話することがやりがいにつながっている。その半面、経営面を考え、今年から情報誌に掲載することで来場者数の大幅な増加につながったが、来場者との会話の時間が少なくなることがネックとなっている。また、加工品として完熟イチゴを使ったアイスやシャーベットを販売する。
北総・東総を中心に情報交換をするために、約30人のイチゴ農家の若手のグループに参加するなど、フットワークを生かして情報の収集・交換をしている。現在、いちご研究会千葉県印旛地区会長や県いちご組合連合会の理事を務めるなど、多忙を極めており、やりたいことに対して時間が足りないという。「将来は、成田という国際空港のお膝元という条件を生かした輸出もしたい」と語った。
(JA成田市特別通信員・宍倉克幸)
市原市・野本尭那さん

幼い頃から手伝いをしていた野本さんは、代表である父の背中を見て育ち、大学卒業後に同社で農業に従事。県外での研修を経て、すぐにハウス2棟を任され、代表や先輩社員から施肥やハウスの管理方法を学んだ。
5年前から営業販売も担当し、取引先と直接やりとりする。水耕栽培でできた農産物の安定した品質や収量、それに伴う安定した価格、使用農薬の少なさなどをPRし、着実に取引先を拡大した。また、大規模小売店で県内農産物を集中的に陳列するJA全農ちばの企画「千葉県フェア」に積極的に参加し、ブーケレタスの認知度拡大に努める。営農面でも、夏場の急激な高温化対策として、ハウス内の水管理や室温の調整を試行錯誤し、この3年間で「糸三つ葉」の出荷量が3倍以上に伸長した。
「手をかければかけるほど良い作物ができる」と感じた野本さんは、現在さまざまな試験栽培に挑戦し、父の興したブーケレタスと「糸三つ葉」に次ぐ「第3の柱」となる水耕作物を模索する。
(JA市原市特別通信員・本城ちひろ)