果樹生産の縮小傾向が目立つ中、農水省は4月に、今後の果樹政策の方向性を盛り込む「果樹農業振興基本方針」をまとめる方針だ。農水省は果樹再興へどんな処方箋を示すのか、その議論の動向をはじめ、産地が抱える課題、課題克服に向けた動きなどをまとめた。
果樹の生産量は年々減少している
廃園の進行、想定以上
主要な果樹14品目のうち11品目で、2024年の栽培面積が30年度の政府目標を下回っている。高齢化や人手不足が、生産現場では深刻化している。
▶24年果樹栽培面積 政府想定以上の減少幅
(2025年01月09日付・総合3面)
果樹振興方針策定へ議論進む
農水省は果樹農業振興基本方針の策定へ、有識者らによる審議会で検討を進めている。これまでに、大規模な経営体の参入推進を進める必要性などが提起されており、とりまとめへ、議論は佳境を迎えている。
▶農水省、農政審へ振興方針策定を諮問
同省は部会の会合で、日本の果樹は高い品質が評価され国内外で需要があるが、現状のままでは需要に応えられなくなる可能性があると指摘。傾斜地が多く機械化や大規模化が困難、未収益期間が長い、剪定(せんてい)など高い技術が必要といったことから、省力化や担い手確保が難しく、園地整備やスマート機械の導入などが急務とした。(2024年10月18日付・総合2面)
▶農政審、リンゴ高密植栽培を視察
長野県で、リンゴ高密植栽培の園地と大規模な基盤整備をした園地を視察した。果樹振興の基本方針の策定に向けて果樹産地の状況を把握し、今後の議論の参考にする目的。生産者、JA関係者らとの意見交換もした。(2024年11月23日付・総合2面)
▶園地集約化、省力樹形導入、担い手確保など論点
果樹農業振興基本方針の答申に向けて、これまで出た意見の論点を整理した。生産基盤の強化に向けて、園地の集約化や基盤整備、省力樹形の導入、新規就農者向けトレーニングファームによる担い手確保が論点に挙がった。委員からは、農家以外や企業を含め幅広い担い手の確保が重要との指摘が出た。(2024年12月18日付・総合3面)
▶方針骨子案に大規模経営の参入推進
急速に進む農家の減少・高齢化を受け「労働生産性の向上」を柱に据えた。具体策として、園地の集積・集約化や省力樹形の導入、先端技術を活用したスマート農業の推進などを挙げ、「大規模な法人経営体の参入を推進する」と明記した。(2025年02月09日付・総合1面)
再興へ動く産地
生産現場では、高齢化や人手不足、高温被害といった果樹生産の課題を克服し、産地を再興させようという動きも起きている。
果樹カメムシに注意!
温暖化が進む中で、注意が必要なのが害虫・果樹カメムシ類だ。その生態の特徴や多発の背景などについて、専門家に寄稿してもらった。
▶果樹カメムシ類の展望 明治大学農学部教授・糸山享
(2025年01月26日付・オピニオン面)
いとやま・きょう
鹿児島大学大学院連合農学研究科修了、博士(農学)。専門は応用昆虫学・害虫管理学、秋田県農業試験場研究員などを経て、2007年から明治大学専任講師、22年から現職。日本応用動物昆虫学会理事などを歴任。著書に「応用昆虫学」(共著、朝倉書店)などがある。
省力化へ期待のリンゴ新品種
大幅に作業が省力化できるとして期待が集まるリンゴの新品種が、農研機構が30年かけて開発した「紅つるぎ」。枝が横に広がらず、空に向かって真っすぐに伸びる樹形が特徴だ。
▶リンゴ「紅つるぎ」 省力と味、直立で両立
(2024年10月07日付・写真面)