農水省によると、2021年のブドウ「シャインマスカット」の栽培面積は2346ヘクタールで、12年の5・1倍になった。JA系統産地で組織する全国果実生産出荷安定協議会(全果協)落葉部会ぶどう委員会によると、24年産シャインの栽培面積は前年実績比5%増を見込み、24年現在も面積の拡大傾向は続いている。
生産者からも人気
良食味や、種無しで皮ごと食べられる簡便性による消費者人気の高まりに加え、従来品種に比べ栽培管理の容易さが生産拡大を後押しする。
従来品種と比べて着色管理の手間が省ける点は、生産者にとって大きな利点の一つだ。「巨峰」や「ピオーネ」などの黒系ブドウは、着色を良くするため、仕立てや摘果による着果管理、散水による園地の温度管理の徹底が求められるのに対して「シャインは、黒系品種ほどシビアな着色管理は求められない」(JA全農やまなし)という。黒系品種は、気温上昇による着色不良が年々深刻化しており「黒系ブドウからの改植でシャインの栽培を始める人も多い」(同)という。

黒系から転換増
山梨県山梨市のブドウ農家・大村信弘さん(36)は、「巨峰」と「シャインマスカット」を計80アールの面積で栽培し、改植によって年々シャインの面積を増やしている。21年の就農当時は「巨峰」のみを栽培していたが、現在は20アールでシャインを生産。シャインは、着色管理の手間が省けることに加えて「黒系品種に比べて遅腐病の発生率が低いことや、脱粒性が低く、正品率が高いなどメリットが多い」という。黒系ブドウに比べて作業性が高く、ロスが少ないことから「今後もシャインを拡大する予定」と話す。
生産量が増えても、価格は上昇傾向が続く。23年のシャインの日農平均価格(各地区大手7卸のデータを集計)は、10年前の13年比で5割高の1キロ1931円。23年は「巨峰」と比べても5割高だ。高単価ながら消費者人気は定着し、減少する黒系ブドウに代わり売り場が広がる。
関東の大手スーパーによると、シャインが9、10月のブドウ類全体の売上げに占める割合は「19年は28%だったが、23年は61%まで増えた」と話す。24年の9月1~23日では、さらに増加し、7割近くを占めるまでになっているという。
(永井陵)
