日本農業新聞「農家の特報班」が今夏の猛暑・高温の影響についてアンケートすると、水稲や野菜・花き、果樹、畜産・酪農の各品目でさまざま影響、被害が出ていることが分かった。調査結果をまとめ、現場にとって必要な対策を探る。
農畜産物の生産者に加え、農業指導に当たるJA役職員や公務員、家庭菜園の愛好家ら127人が回答。北海道から鹿児島まで42都道府県から届いた。
生産・出荷量が「減った」は65%、品質が「下がった」は66%を占めた。原因として最多だったのは「高温」そのもので、89%に上った。「害虫」67%、「病害」35%と続いた。日照不足や長雨などを挙げる回答も複数あり、天候不順の影響が色濃く出た。
「稲の株張りが小さいまま収穫期になった」。アンケートに回答した広島県の70代女性兼業農家は、そう話す。田植え後、水管理に留意していたが「収穫量は減った」。今後は「まずは土壌診断を受けて、稲刈り後の田の状態を確認したい」と考える。
佐賀県で大豆を栽培する親族の作業を手伝う30代男性は11月中旬、複数のカメムシを発見。発見時の状況を「11月とは思えない暑さだった」と振り返る。7月の種まき後、2回防除していた後の発生で「この密度は見たことがない」と話す。
野菜の複数品目を栽培する東京都の50代男性兼業農家は、根茎類の股割れが「例年に比べ多い」と話す。今夏は高温からの大雨で、ハクサイの結球も進まなかったという。
宮崎県の60代男性農業法人従業員は「高温多湿によってダイコンの黒斑細菌病が多発した」と話す。雨のたびに広がり防除しても止まらず「あと20日もすれば収穫だった。来年以降、この地域でダイコンは作れるだろうか」と不安を抱える。
トルコギキョウを栽培する愛知県の60代女性花き農家は「高温の影響で細い状態で咲いてしまった」と話す。丈もボリュームも足りず「階級が非常に悪い」。コナジラミの被害も多いという。
複数の果樹農家が「着色不良」を挙げる中、秋田県の60代男性のリンゴ園地では着色不良に加え、早期落果や裂果が発生。男性は「今後も栽培を続けられるのか」と懸念し、「残暑が厳しい時は落果防止剤が必須。散布時期も考えないといけない」と話す。
「柿のカメムシ被害が多かった」(三重県の60代男性果樹農家)、「ブドウの片方部分で焼け」(山梨県の60代男性果樹農家)などの被害も報告された。
高温が家畜に与えるダメージも深刻で、農家の負担が膨らんでいる。宮城県の50代男性畜産農家は「和子牛が熱中症にかかり診療費が増えた」と話す。
影響は年をまたぐことも。北海道の40代女性酪農家は、猛暑で昨年産のデントコーンがでんぷん過多になったという。デントコーンはサイレージ化して今年、牛に与えたが「栄養不足になり、牛へのストレスとなった」と話す。今年は乳房炎も多く、計画より出荷量が減ったという。