[営農×流通ワイド]加工用ブロッコリー 高まる国産ニーズ 柔らかな食感魅力
大玉化で収益性向上 低温輸送網を構築 JA埼玉ひびきの
調理の簡便さから市場が拡大する、冷凍などの加工用向けブロッコリー。輸入物が多いが、鮮度や栄養価の高さなどから国産へのニーズが伸びている。加工用ブロッコリーの生産に力を入れるJA埼玉ひびきのは、市場出荷向けより花蕾(からい)を大きくし、収益性を高める。畝間や株間を広くして病害を予防。鮮度を維持するため、コールドチェーン(低温輸送網)を築く。
市場向けのブロッコリーは一般的に花蕾径を12センチほどにするが、加工用はカットが前提で、これより大きくしても品質が保持されれば問題がない。農家にとっては1個当たりのサイズが大きく重いほど収益性が上がるため、大玉化させて出荷するのが主流だ。
同JAでは、加工用は花蕾20センチ以内と設定する。これ以上大きくすると、開花して商品価値が落ちるリスクが高まるという。青果向けでは長めに残す主茎も短く調製し、2、3センチ残すだけ。加工時の廃棄が減り、出荷先の作業性向上につながる。
2021年度は11戸が40~50トンを計画する。出荷期間は11月~翌年2、3月。大玉化には生育期間を伸ばす必要があるため、黒すす病などの病害対策が欠かせない。株間と畝間を市場向けより広くして風通しを良くするよう指導するなど、試行錯誤を重ねている。
品種は重量感がある「おはよう」「こんにちは」「SK9―099」が多い。鮮度を保つため、11月中は午前10時までに収穫。プラスチックコンテナ(1ケース10キロ)に詰めて予冷庫で保管し、その日のうちに冷蔵車で加工工場に出荷する。
市場向けも含めて3ヘクタール栽培する本庄市の庄田浩之さん(44)は「価格が一定なので収支を計算しやすいのが一番の魅力だ」と強調する。市場向けと違って収穫サイズの見極めや、調製作業が簡単なため、省力的で面積を広げやすいのも利点だという。
一方で、需給のミスマッチが課題となる。注文が急に増えた場合は、花蕾径が20センチに達しない株も収穫。1ケース当たりの個数が増えるため、収益性が下がる。見込み通りの注文がない場合も、大玉化させたブロッコリーは市場出荷が難しい。対策として、JA全農さいたまは、大口の取引先とは別に冷凍食品用に出荷している。
全農は加工・業務用ブロッコリーの国産化に向け産地づくりを17年から進めており、同JAもその一環。21年度は同JAを含め15県25JAが参画し、360トンの出荷を予定する。全農青果営業課は「国産品の出荷が増え、加工・業務用ブロッコリーの市場自体が拡大している」と指摘する。
セブン、全農と取引
コンビニ最大手のセブン―イレブンは、サンドイッチやサラダの具材に、国産ブロッコリーを使用する。同社はJA全農と2019年から取引を開始。地域差はあるが、11月から2月にかけて一定価格で取引する。3年目で調達量は倍増した。
国産を重宝する理由は品質にある。セブン―イレブン・ジャパン商品本部の平井進吾マーチャンダイザーは、「色味や柔らかな食感など、国産の有意性は高い。輸入品は物流の停滞など不安定要素もある」と説明。全国2万1000店舗に安定供給する上で、全国に産地網を持つ全農との連携に乗り出した。
国産の強みを失わないよう、効率的な輸送を組む。ブロッコリーは、北海道から九州まで全国に9カ所あるプロセスセンター(PC)に出荷後、商品製造工場に納品される。各産地は最寄りのPCに納め、輸送距離を削減。一層の鮮度維持へ、今期からPCまで定温流通を徹底した輸送を強化した。
供給時期は約3カ月とまだ限定的。それでも平井氏は「品質、食味、コストの各要素において、長期間安定調達できるスキームをつくりたい」とし、国産の周年調達を目指す。
冷凍需要 伸び大きく
ブロッコリーは、冷凍野菜市場での注目も高い。生活クラブ事業連合生活協同組合連合会(生活クラブ生協)は、冷凍ブロッコリーの20年売上高が前年比で3割増加。他の冷凍野菜と比べても伸びは大きかった。加工食品課の木下雅晴課長は、「保存性の高さや、使いたい時に使いたいだけ使える利便性から人気が高い」と話す。
同クラブは、熊本、群馬と東西2県の産地と年間契約を結び、冷凍用に仕入れる。重視するのは持続可能な取引だ。木下課長は「燃油、資材など諸経費の上昇、作柄悪化など、産地の厳しい事情もある。実需側が買いたたけば、安定供給にねじれが発生する」と指摘。産地が無理なく品質を保てる価格設定に腐心する。
シェア奪還が鍵
国産ブロッコリーは増産が著しい。農水省によると、20年の出荷量は約16万トンと10年で37%増。国産の増産や主産国の供給不安定化から、生鮮品の輸入は10年で2割に減った。ただ、冷凍品の輸入は約6万トンと同9割増。安定供給される冷凍品からのシェア奪還が、国産振興の鍵を握る。
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