家畜排せつ物由来の堆肥広がる 耕畜連携、ペレット化で流通も 化肥高止まりで注目
同省は、22年度の補正予算から「国内肥料資源利用拡大対策事業」を始めた。家畜排せつ物や食品残さ、下水汚泥、木材などを活用して化学肥料の使用量を減らす際に、堆肥のペレット化や耕種農家の実証などで支援を受けられる事業だ。22年度の取り組み数は全91件だったのに対し、23年度では4割増の同133件。特に、家畜排せつ物を利用した取り組みは22年度で53件だったが、23年度は92件で7割増加した。
同省技術普及課は「肥料価格の高止まりで、低価格で安定している国内資源を使った肥料への注目が集まっている」と分析する。農産物や生産資材の価格動向を表す農業物価指数(20年の価格を100)は22年7月以降、肥料の価格指数は130以上となり、高い水準が続く。直近2月では139だった。
特に畜産農家が多い九州などでは、規模拡大なども相まって堆肥の生産量が多く、ペレット化するなどして広域に流通させる事例も増加しているという。一方で、ペレット化するには、一般的に水分を15%以下に落とす必要があり、製造にかかる労力が増す。畜産農家の中には、ペレット化せず、ばら堆肥のまま、袋詰めすることで広域流通する例もあり、流通や利用形態の多角化が進む。
同省によると、堆肥に化学肥料を混ぜて肥料成分を調整した「有機入り複合肥料」の製造量も増加傾向にあるという。耕種農家が堆肥と化学肥料を一度に散布できるため、省力化につながっている。
(森市優)