[天皇杯への道](4)多角化経営 シュシュ(長崎) 6次化で年49万人集客 直売や加工品人気
同施設は大村湾を見下ろす丘陵地にある。売上高の4割は、約200人が出荷する直売所。6割は加工品、洋菓子、パン、アイス、レストラン、体験教室や収穫体験といった6次産業化部門が占める。代表の山口成美さん(61)は「ここでしか買えない商品や、一年を通じて観光農園を開くなど、いつ来ても楽しめる場にしている」と集客のこつを語る。
これまでに200種類以上の商品を開発し、市で誕生したニンジン「黒田五寸人参」を使ったジュースなどが人気を集める。最大のヒットは、地元産の牛乳と卵を使った「ケッコーイケてるシュシュプリン」。最大で毎月1万個を売った。レストランでは地場産野菜のサラダバーが人気だ。
従業員の8割が女性で、商品開発にはそのアイデアも生かす。近隣に整備した加工施設で自ら加工し、付加価値を高めて自社で売るため、農家から加工用の農産物を買い取る価格は一般的な加工業者の10倍程度だという。
同施設のある福重地区は、梨狩りなど観光農業が主体だったが、農家の書き入れ時は1年に2カ月程度しかない。多品目を栽培するものの、共販に出せるほどの主力品目がないことが課題だった。
そこで1996年、多品目生産の強みを生かそうと有志の農家でビニールハウスの直売所を立ち上げた。97年には、加工品第1号の手作りアイスの販売を開始。「農産物そのものを売るだけでなく、売るためには形を変えることも必要」(山口さん)と、手応えをつかんだ。
2000年に8戸の農家で現在の施設を開業し、加工施設やレストラン、洋菓子・パン工房などを増設。農業体験や婚活、民泊なども行う交流拠点に成長した。就農希望者に農産物の生産から加工品開発までの実習も行い、後継者の育成にも貢献する。山口さんは「農業は工夫次第で立派な産業になる。今後も若者に夢や希望を与えられる仕事をしたい」と力を込める。
経営概況
2000年に「おおむら夢ファーム シュシュ」を開業。直売所、農産物加工販売、飲食店、農業塾、婚活、農家民泊などの事業を展開。年間49万人を集客する。「シュシュ」で加工品の原料や直売所で委託や買い取りの取引をする農家は約200戸。
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