[論説]スーパーエルニーニョ 自然災害多発に厳戒を
世界気象機関(WMO)は4日、ペルー沖の平均海面水温が半年以上続けて0・5度以上となるエルニーニョ現象が発生したと発表した。地球温暖化との相乗効果で、今後5年間は地球全体が高温となり、洪水や干ばつなど自然災害が多発する恐れを指摘する。これまでの常識を超える“スーパー(超)エルニーニョ”の出現だ。エルニーニョとはスペイン語で「男の子=イエス・キリスト」を指す。
WMOのペテリ・ターラス事務総長は、声明で「気温への顕著な影響は翌24年に表れる」とも指摘した。今年はその序章で、世界規模の気候変動に備えなくてはならない。
日本では、同現象が発生した年は冷夏となるが、1991年や97年のようにエルニーニョ現象が起きても記録的な猛暑が続いた年もある。
今夏はどうなるのか。気象庁は毎月、1カ月の天候状況を分析し、公表している。それによると3~6月は平均気温は平年を上回り、「暑い夏」の前兆のようだった。2月に終息した日本に厳寒厳暑をもたらす「ラニーニャ現象」の影響が年内まで続いているためで、同庁は「今夏は平年より暑くなる」と予測、熱中症にも警戒が必要だ。
加えて、インド洋の亜熱帯海域で海面水温が上昇する「ダイポールモード現象」が発生し、日本付近の太平洋高気圧が例年より東側に張り出し、南からの暖かく湿った空気が西日本に入りやすくなっている。これが九州北部で続く豪雨の引き金となった。
暖かく湿った空気が入り込んで梅雨前線は活発化し、広い範囲で線状降水帯が同時発生している。福岡県太宰府市や久留米市では10日、1時間雨量が80ミリを超える「猛烈な雨」に襲われた。地球の裏側の海面水温がわずかに変動しただけで世界中が異常気象となり、農業は深刻な打撃を受け、世界規模の食料不足を招く恐れもある。
洪水など大災害がひとたび起きれば、そこにある暮らしは根こそぎ奪われてしまう。洪水の中、車や徒歩で田んぼや水路の見回りは厳禁だ。まずは安全を確保し、自らの命を守ってほしい。「流れる水には近づかない」。これは自然災害から身を守る鉄則だ。
スーパーエルニーニョの出現は、国民の暮らしや命を守る安全対策を早急に確立せよという地球からの緊急メッセージと受け止めてほしい。