厚生労働省によると、有毒植物(キノコとジャガイモ除く)による食中毒患者数は2023年までの5年間が588人で、うち60歳以上が約5割(263人)を占めた。また、死亡者9人は全て60歳以上だった。
24年までの10年間で食中毒の発生が最も多いのはスイセンだ。患者数は計226人で、うち1人が亡くなった。ニラやタマネギなどと間違えることが多いという。
今年も食中毒が発生した。4月8日に福島県いわき市の57歳女性が、「バイケイソウ」とみられる植物を、山菜の「ウルイ」と誤って採り、酢みそあえにして食べた。また、4月16日にも発生。新潟県佐渡市で70代女性が「コバイケイソウ」を「ウルイ」と間違え、おひたしに調理し食べた。ともに命に別状はないが、嘔吐(おうと)や下痢、めまいなどの症状が出た。
飲食店で提供される料理も油断できない。過去にはトリカブトを使った料理を提供し、それを食べた60代男性が一時、意識不明の重体となった例がある。
60代以上の患者が多い理由について、野草に詳しい富山県薬事総合研究開発センターの田村隆幸主任研究員は、「若者よりも60代以上の人たちは、山菜を食べる文化が根付き、そのおいしさを知っているからではないか」と指摘。「怪しいと思ったら食べず、専門家に相談すべき」と訴える。
農水省は有毒植物の食中毒対策として、山などに自生する野草や山菜を摂取する場合、有毒かどうか確信がなければ、➀採らない➁食べない➂売らない➃人にあげない――を徹底するよう喚起する。
(前田大介)