[論説]コンニャク芋価格低迷 業界挙げ需要増やそう
JA全農ぐんまによると、2023年の生芋価格は30キロ当たり3003円と、ここ10年で3割安となった。背景には、深刻な“こんにゃく離れ”がある。総務省の家計調査によると1世帯当たり(2人以上)の支出金額は30年余り右肩下がりが続き、23年は年間1660円と過去最低となった。食生活の多様化、共働き世帯の増加などで、家庭での調理機会が減っていることに加え、コロナ禍で多くのコンビニが、衛生面や労力不足を理由におでんの店頭販売を取りやめたことが大きい。
その結果、こんにゃく粉の在庫量は、1年分の需要量が賄える水準まで積み上がった。資材価格の高騰、昨夏の極端な高温少雨による不作も重なり、産地の農家は「自助努力では限界だ」と訴える。
最優先で取り組むべきは、需要を増やすことだ。こんにゃくは食物繊維が豊富で整腸作用、便秘の解消が期待できる。低カロリーで満腹感を得られるため、肥満や生活習慣病の予防にも適している。国産のこんにゃくをもっとPRし、和洋を問わずヘルシー料理の食材としてもっと使ってもらえるよう、業界挙げて需要を増やす知恵を絞りたい。
コンニャク芋の価格低迷を受けてJA群馬中央会などは7日、県選出の国会議員らに要請した。要請には経営安定対策に加え、こんにゃく粉を使った化粧品など、食品以外の新たな用途の研究開発に産学官民で取り組むことも提案。原料芋を多く含んだ“濃いこんにゃく”で差別化するなど、こんにゃく製品に原料芋、粉の含有量の表示を義務付けることも盛り込んだ。ぜひ、実現してもらいたい。
コンニャク芋は出荷するまでに2、3年かかる。広い畑や種芋、貯蔵庫、農機具など多額の投資が必要で、一度廃業してしまったら、技術は途絶え、産地の再興は難しい。栽培面積、収穫量で全国の9割以上を占める群馬県のコンニャク芋は、中山間地域の主要な土地利用型作物で、農家の貴重な収入源となる。コンニャクに代わる作目は限られており、離農は耕作放棄地の増加に直結する。
こんにゃく危機を乗り切り、持続可能な農業経営にするためには農家やJA、製粉、製品製造事業者、自治体などが連帯し、需要拡大を進めよう。おでん、煮しめに欠かせないこんにゃくの食文化をなくしてはならない。