ふるさと納税返礼品、信頼回復へ対策を強化
適正表示へルール改定 宮崎県都城市
宮崎県都城市は、ふるさと納税の返礼品事業者として契約していた食肉加工業者が一定期間、輸入品を使用し、不適正表示が発覚したことを受け、再発防止のため返礼品事業者と交わす契約内容を厳格化した。故意の産地偽装など悪質な法令違反を犯した事業者とは2度と取引しない。
「宮崎県産若鶏もも3・3キロカット済み」を扱っていたヒムカ食品(熊本県錦町)が2022年10月から半年間、タイ、ブラジル産を使用していたことが昨年11月に発覚。市は同社との契約を解除し、支払い済みの委託料相当の1億8000万円を請求した。購入者には代替品の発送か寄付金の返還で対応している。
同市の返礼品は畜産物などが人気で、総務省によると22年度のふるさと納税寄付金額で全国1位。市は「返礼品は農畜産物などにとって重要な流通経路。信頼回復と再発防止のため、事業者には厳格に対応したい」(ふるさと産業推進局)と話す。
新ルールを定めた契約では、事業者が食品表示法などの法令違反を犯した場合、故意かどうかなどを考慮した上で①一定期間の取り扱い停止②契約解除③解除の上、二度と契約しない――といった対応を明示。ルール厳格化と合わせて、来年度以降、全事業者への立ち入り調査などを始める。
業者と契約厳正対応を 自治体に通達
農水省など、ふるさと納税の関連4省庁は、返礼品に使われる農畜産物などの表示偽装を受け、市町村に適正表示の確保を働きかけるよう求める通知を都道府県に発出した。市町村が事業者との契約時、事前に厳正に審査し、契約後も定期的な調査などを求めた。
同省は「産地名偽装は消費者の信頼を揺るがし、農家の取引にも支障を来す」(消費者行政・食育課)と強調。ふるさと納税制度の地場産品基準や食品表示法の適正運用に向け、昨年12月に発出した通知では、順守事項を示した書類の整備、法令違反時の取引中止を定めた規定を盛り込んだ契約締結なども要望している。
品質統一の指針検討も 山梨県
山梨県は、県産果実の返礼品で、一部事業者による粗悪品の送付が問題化していることを受け、返礼品を扱う事業者や自治体向けのガイドライン策定に乗り出した。品質統一のための目ぞろえなどが焦点となる見込みだ。
同県はブドウ「シャインマスカット」「巨峰」、桃などのブランド産地を抱える。県が複数のふるさと納税サイトを確認すると県産果実の評価のうち、5段階で3以下の割合は本年度で14・2%だった。県は「品質が守られていれば評価はもっと高い」(販売・輸出支援課)と強調する。
果実を扱う事業者が品質水準を維持しないまま仕入れたり、保全が不十分なまま発送したりするケースがあると県は分析。市町村や関連企業、JA全農やまなしと「県ふるさと納税返礼品(県産果実)品質確保協議会」を設立。5月までにガイドライン策定を目指す。