栃木県栃木市で水稲1・5ヘクタールを栽培する阿部雅美さん(76)は、軽トラックの荷台にクレーンとダンプを自作した。テニスのネット巻き取り器を使用したレバーを回せば、荷台に載せた箱が傾き、ダンプ代わりになる。もみ殻を箱に入れ、箱を傾けた状態で軽トラを走らせれば、省力的に散布ができる。
阿部さんは以前は、軽トラの荷台にもみ殻を積んで、水田の四隅に落としてから、スコップなどで散布していた。10アール散布するのに最低1時間かかり、体への負担も大きかった。「ダンプを買おうとしたが、お金がかかりすぎるので自分で作ることにした」(阿部さん)。
阿部さん特製のクレーンは、フックの付いたワイヤを、中古のテニスのネット巻き取り器と滑車を使って巻き取る仕組みで、着脱可能。荷台のサイズに合わせて合板(コンクリートパネル)で作った箱にフックをかけてワイヤを巻き取れば、箱が傾き、ダンプのように使える。箱の後方側面は、ちょうつがいを外せば倒れる。

後方側面を倒した状態で、軽トラを田畑で走らせれば、地面の凹凸で軽トラが揺れ、荷台に載せたもみ殻が勝手に滑り落ちる。もみ殻散布は水田1枚(約25アール)当たり10~15分で終えられるようになった。
他にも例えば、収穫物を詰めて重くなったコンテナも、フックをかけてネット巻き取り器のレバーを回せば、大きな力を使わずに荷台に載せられる。
クレーンとダンプは、3年ほど前に製作し、材料費は3万5000円程度だった。
発明が趣味という阿部さんは、月に1回、発明仲間と研究会を開いている。クレーンとダンプについて阿部さんは、「大した発明じゃない」と控えめ話しつつ、「散布の作業がとても楽になった」と笑顔を見せる。
(4回掲載)
