
総務省家計調査によると2023年の1世帯(2人以上)当たりブロッコリー購入量は4453グラムと13年比で21%増えた。「ゆでるだけ、蒸すだけ、電子レンジで、と簡単調理を楽しめる主婦の味方。明らかに消費者の食べる頻度が高まった」。熊本県の料理家、廣綱裕子さん(57)はブロッコリー人気をこう捉える。
廣綱さんのユーチューブチャンネル「元気ママキッチン」では、ブロッコリーを使ったレシピ動画が370万回以上再生されるほどヒット。弁当を作る主婦世代や、栄養面や健康に興味を持つ50代以上が多いという。廣綱さんは「調理も簡単で栄養価が高い、お弁当の隙間を埋めるにはもってこいの食材。子ども受けも良い」と分析する。
スーパーも注目
スーパーの売り場でも勢いがある。ライフコーポレーション(東京本社、東京都品川区)では、23年までの10年間で首都圏の売り上げが4割増加。「洋菜の中で断トツのナンバーワン」(同社)だ。今後、指定野菜に加わることで価格が安定し「しばらく需要は伸びていく」とみる。
イオンリテール(千葉市)でも青果の中で売上高は上位に位置し、同年間で2割増加。ブロッコリーの冷凍・総菜商品も充実しており、青果の伸び以上に需要が拡大した。人気の要因はサラダや炒め物、煮込み料理と調理の幅が広く、どの季節でも食べられるためと受け止める。

安定価格が魅力
需要の伸びに応え、国内の作付面積は約1万7200ヘクタールと10年間で26%増加。最も伸び率が高い熊本県内は22年の作付けが同5倍近い900ヘクタールに拡大させた。県経済連によると、ブロッコリーの価格が安定していたため、イ草からの転換が進行。発泡スチロールに氷を詰める設備が充実して遠隔地への輸送が可能になり、販路が拡大したのも要因だ。
国内では高温期(8~10月)に出荷量が減る傾向で、産地は比較的冷涼な北海道と長野が中心。高冷地での生産拡大へ期待が寄せられる中、長野県は出荷量を10年で5割増やした。JA全農長野は「需要が伸び単価が良くなってきた」とし、県内各地で増産を進めている。
ブロッコリーは26年度から「指定野菜」に加わる。消費、小売り、生産と関わる者に“うま味”をもたらし、注目度が増す一方だ。
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農業や食品に関する統計から、伸長する品目・分野に焦点を当て、ヒットの理由をひもとく。