[論説]ジャンボタニシ問題 正しく知り すぐ駆除を
農水省によると、2022年の時点で関東以西の35府県で発生が確認された。繁殖力が強い上、暖冬で越冬する貝が増えるなどして「生息域が拡大している可能性がある」と指摘する専門家もいる。
ジャンボタニシの主な対策は、殺貝効果のある石灰窒素を収穫後や春に散布することや、冬期の耕うんによる粉砕、田植え時の薬剤散布、田植え後の浅水管理などがある。どれか一つではなく、複数の対策を組み合わせて、地域ぐるみで行うことが被害の軽減につながる。
中でも、重要なのが春の対策だ。気温が上がると、越冬していた貝が活動を始めるからだ。春に産卵が始まれば、増殖に歯止めがかからなくなる。岐阜大学応用生物科学部の伊藤健吾教授は「春の10個体の駆除は、夏の1000個体に匹敵すると言ってもよく、人手を割いてでも取り組んでほしい」と指摘する。今後の被害を減らすにはこの時期の防除徹底が重要で、越冬した貝の捕殺や卵塊の除去に取り組む必要がある。
産地では播種(はしゅ)・育苗作業が本格化し、田植えが始まった地域もある。繁忙期に、ジャンボタニシ対策にまで手が回らない農家も多いだろう。例年、被害が大きい場所から優先的に対策を行うなど工夫も欠かせない。
まだ発生していない地域は、何としても侵入を食い止めよう。雑食性のジャンボタニシを除草目的で水田に放す動画が近年、インターネット上で投稿されて問題となったが、繁殖力が強く、周辺農地に拡散すれば悪影響を及ぼす。農水省は「一度侵入・まん延すると根絶は困難」とし、田に放つのをやめるよう呼びかけている。
それでも専門家には「除草対策として、ジャンボタニシを田に放ってもいいか」という相談が寄せられているという。ネットの情報に惑わされず、各県の普及機関など信頼できる情報をもとに、適切に除草を行うべきだ。
未確認の新潟県では昨年、植物防疫法に基づく「総合防除計画」に、ジャンボタニシを水田に持ち込まないことを農家の順守事項に掲げた。違反すると30万円以下の過料となる。故意でなくても農機具に付いた泥に混じって持ち込まれる場合もある。
生息地域が広がれば、米の安定供給に悪影響を及ぼすだけに、対策を徹底しよう。