甘酒人気の再燃に向けて、新商品の提案が活発化している。老舗メーカーは地元のブランド果実を使った新商品で、若年層などへ売り込む。乳酸菌添加などで健康性をアピールし、本格輸出に乗り出す業者も出てきた。甘酒の消費量が伸び悩む中、新たな需要を開拓して“第二次ブーム”を起こそうとする業界の動きを追う。
老舗メーカーは県産果実で注目
明治時代から甘酒を製造販売している老舗発酵食品メーカー・吉田本店(岡山市)は2023年8月から、地元岡山県産の果実を使った甘酒を販売する。
同社は、甘酒が健康や美容に良い飲料として注目されていることを受け、女性や若者世代など新たな客層の開拓を目標に新商品を開発。同社の吉田和男社長は、果実を組み合わせることで「甘酒が苦手な人でもおいしく飲める商品に仕上がった」と話す。
白桃、ブドウ「ピオーネ」、レモンの3種類を展開。ブランド力が高い岡山県産果実を使っていることから「ネット販売業者などからの注目度は高い」(吉田社長)という。
同商品は注ぎ口とキャップが付いたパウチ容器入りで、容器ごと凍らせてシャーベットでも楽しめる。吉田社長は「夏場の熱中症対策としても活用してほしい」と話す。今後はマスカットやイチゴなど種類拡充も予定する。
高まる健康需要 輸出拡大に弾み
大潟村あきたこまち生産者協会(秋田県大潟村)は、海外で高まる健康ニーズに向けて、甘酒の提案を強めている。昨夏に香港で開かれたフードエキスポPROにも出展し、整腸作用のある乳酸菌の添加や、砂糖不使用といった特長をアピール。中華圏や東南アジアのバイヤーらから高い関心を集めた。
同社の甘酒輸出量は右肩上がりだ。22年1月ごろから、香港を中心に輸出を本格化。現在は、シンガポール、イギリス、フランス、米国などの販路も開拓し、日本国内向けを含めた総出荷量のうち1割を海外が占める。
輸出拡大に弾みをつけようと、5月には米国向けに抹茶味などの新商品の発売も予定する。同社は「新たなフレーバーを展開することで、認知度向上や売り場拡大が期待できる」と話す。
調査会社インテージによると、23年の甘酒の販売金額は、前年比2%増の160億円。第1次甘酒ブームで市場が急拡大した17年比では4割減となるものの、近年の減少トレンドから抜け出した格好だ。一方で、23年1年間の甘酒購入者1人当たりの平均支出額は1354円と、10年間で倍増。需要が一定に定着している。健康ニーズの高まりが甘酒の消費拡大へ追い風となる中、市場の活発化に期待が高まっている。
(鈴木雄太、永井陵)