飼料高騰、酪農家を直撃 北海道 自給の道探る
弟子屈町で酪農を営む「トレジャーロッジ」。約920頭の乳牛を飼養し、年間の生乳出荷量3700トンを誇る大型牧場だ。
成牛用だけで月間100トンの配合飼料を必要とする同社にとって、飼料高騰は経営を直撃する。支出に占める購入飼料費の割合は約4割。7月からの一層の飼料の値上げで、昨年に比べ年間1000万円超の支出増を強いられる。
■海外依存に危機感 経営コスト見直し
同社代表の江上真一さん(50)は「長期的な視野による経営が必要だ。草地更新で良い牧草を多く確保し、配合飼料の割合を減らしていく」と話す。
牧場全体の費用を見直し、値上がり分を吸収させて資金の流失を抑える。草地は可能な限り自力で更新する方針だ。預託していた子牛の育成管理も、一部自ら行う。
牧草栽培に使う肥料価格の値上がりも同社には大きな痛手。このため昨年は地域のバイオガスプラントによる消化液を活用し、25%の肥料代を削減した。「飼料や肥料の支出を減らし、過度な外部依存からの脱却を目指す」と強調する。
■影響長期化の恐れ
JA全農やホクレンは、7~9月期の配合飼料供給価格を前期(4~6月)に比べて値上げする。全農は全国全畜種総平均で1トン当たり4700円値上げ。値上げは4期連続だ。コロナ禍による原料の国際相場の高騰、海上運賃の上昇、円安が重なった。
飼料高騰を受けた農家の危機感は強い。配合飼料安定基金で一時的に影響は緩和されても、価格の高止まりが長期化する恐れがあるからだ。稚内市の酪農家、石垣一郎さん(40)は「気候条件が厳しい道北では難しいが、濃厚飼料の原料となるデントコーンなどの栽培へ向けた機運が高まっていく」と見通す。
ただ、世界的な穀物相場が上昇した2007年など、これまでも飼料の異常高騰は起きている。そのたびに自給飼料の重要性が強調されてきたが、飼料自給率はここ30年、25%前後で推移。高まっていない現実がある。
酪農学園大学の荒木和秋名誉教授は「畜産クラスター事業による大規模投資が進んでいる北海道などで外部依存の流れを変えることは容易ではないが、自給飼料を確保し、国内、地域内で循環させることが必要だ。取り組みを一過性に終わらせてはならない」と指摘する。