家事で忙しい女性の時短調理ニーズに応えたい──。静岡県牧之原市などが管内のJAハイナンがこうした思いで開発したのが「ブロッコる?」だ。カットしたブロッコリーを電子レンジ調理ができる包装袋(1袋160グラム)に入れた包丁いらずの時短商品。発売2年目だが、市街地のスーパーでリピーターを獲得し、ヒット商品に育ちつつある。
「陳列がないと次の入荷日を聞いてくるお客さんが現れ出した」。静岡市のJR静岡駅ビル内にあるスーパー、澤光青果静岡店は「ブロッコる?」の人気をこう話す。同商品と同じ価格帯だがボリュームのある生鮮ブロッコリーの隣で販売。主婦をはじめ、会社帰りの男性などが買っていくという。
パッケージは女性の目を引くようこだわった。JAは「ブロッコリーの消費は増えてきた。デザインや時短の価値も加え、売り上げを伸ばしたい」(営農企画課)と期待する。
1世帯購入量 10年で3割増
ブロッコリーの年間購入量は22年、1世帯(2人以上)当たり4・9キロと10年間で29%増えた。作付面積・出荷量も拡大。生鮮ブロッコリーの輸入量は23年、2200トンと20年間で97%減少。国産が市場の奪還を果たした。産出額は直近の21年、487億円と10年間で34%増加。指定野菜であるサトイモとの差を広げ、ニンジンとハクサイを抜いた。
消費の伸びの要因について、サラダなどに使うセブン&アイ・ホールディングス(東京都千代田区)は「健康意識の高まりでタンパク質が豊富なブロッコリーの需要が増えた」と指摘。鶏肉などと一緒に食べる機会が増えた上に、冷凍食品の市場拡大も要因とみる。
同社はレンジ調理可能な包装資材を使ったカットブロッコリー商品「お手軽レンチン生野菜」を一部地域で限定販売。時短ニーズに応えようと開発した。
JA全農は「サラダや洋食、弁当などさまざまなシーンで消費されてきた」(営業開発部)と分析。豊富な食物繊維など栄養成分の高さも消費を後押ししたとみる。
ブロッコリーは、他の野菜よりもタンパク質やビタミンCなど栄養成分が多い傾向だ。近年は抗酸化作用のある成分スルフォラファンも注目され、機能性を売りにした商品展開も目立つ。
農水省は1月、26年度にブロッコリーを指定野菜にすることを決めた。消費量拡大を背景に“出世”を果たしたブロッコリーの動向を追う。(3回掲載)