7110人が回答したアンケートで、「適正」と考える5キロ当たり店頭価格について500円刻みで質問した。
消費者の立場で回答したのは約4900人。最多の「2000円~2500円未満」は27%だった。「ちょっと安過ぎかもしれないが、家計に無理がない価格」(長野県・会社員女性40代)、「高騰する前と同じくらいだと助かる」(栃木県・派遣社員女性40代)と経済的な理由を挙げる声が目立った。
生産者の立場で回答したのは約500人。最多の「3500円~4000円未満」は、23%だった。「中規模の米農家が再生産するために必要な価格」(熊本県・農家男性60代)、「水稲農家の生産費から」(兵庫県・農家男性60代)と、コスト面や稲作の持続を考慮して選んだ人が多かった。
「両方の立場」で回答したのは約1700人。最多は「2500円~3000円未満」「3000円~3500円未満」で、いずれも23%だった。消費者として生産者に、生産者として消費者に、思いを寄せる声が複数届いた。
「2500円~3000円未満」を選んだ人は「消費者の購買できる最大値か」(長野県・兼業農家男性70代)、「今年より安いが、去年より高くないと農家が困るだろう」(宮崎県・会社員女性50代)などとする。
「3000円~3500円未満」では「農家さんが黒字で生活してほしい」(神奈川県・会社員女性20代)、「主食は無理なく手に入る価格であるべきだ」(長野県・農家男性40代)との声が上がっていた。
伊藤亮司・新潟大学農学部助教

今回のアンケートは、生産者と消費者の認識のギャップを改めて浮き彫りにした。5キロ当たり2000円を農水省の生産費調査に基づいて精査すると、農業経営は赤字すれすれの水準だ。
農家の収益確保を考えると、望ましい生産者米価の価格帯は60キロ当たり2万円が基本。これを実現するには店頭価格で60キロ5万円前後、5キロ換算で4000円超。しんどい思いをする消費者もいる。
消費者は5キロ3000円未満、生産者は5キロ3000円以上を支持する回答が多い。3000円台が落としどころかもしれない。ただ、生産者は一定水準の価格にならないと、米生産を続けることができない。
一方で、物価全体が上がっても実質賃金は上がらず、米の値上がりで生活の苦しさが増していると感じる人が多いことも回答結果から伝わってくる。
米の安定供給に不安を感じる人が大多数で、生産者への所得支援を支持する人も多い。こうした傾向から「農家を支えた上で、買いやすい価格を目指してほしい」という政策ニーズが見えてくる。
生産、消費に何らかの支援をするのは先進国では常識だ。欧州型の生産者所得補償、低所得者の食料購入を補助する米国の栄養支援プログラム(SNAP)の例もある。日本では、どのような政策を講じるか。国民的な議論をしていくべきだ。