かんきつ守れ…集落営農奮闘 愛媛で法人設立進む 共同管理、就農受け皿にも
かんきつは機械化、園地の集約が進んでいないことなどから、集落営農に向いていないとされてきた。
しかし、伊方町中浦地区の農家は「何かしなければ産地がなくなる」との危機感から新たな取り組みとして挑戦。40~70代の8人で20年9月に法人を設立した。それぞれが経営を続けながら、離農した農家から34アールを請け負い共同管理。放棄園30アールも整備中で、計64アールの共同管理を目指す。
同地区のかんきつは約13ヘクタールと30年前に比べ半減した。荒廃農地が増えると、防除などに使うスプリンクラーの維持費負担が増す。10アール当たりの年間経費は6万円と、30年前の3倍に増えた。青山満喜理事は「これ以上面積が減ると経費がかさみ採算が合わなくなる」と危機感を募らせる。
法人設立で新規就農者確保も狙う。今後も請け負い面積を増やすには人手が不可欠だからだ。就農者を呼び込もうと、県と連携し5アールで高収益のモデル園を整備。緩傾斜化し、早期成園化に向けたマルドリ栽培(マルチ・点滴かん水同時施肥法)を採用する。
県オリジナル新品種「紅プリンセス」を今年植え付けた。25年から収穫を予定する。6月中旬には同法人のホームページを作成。「ミカン農園体験プログラム」として短期間の受け入れを始めるなど、就農者確保に向け動き始めた。
4月からは40代の組合員が1人増えた。山下増夫代表は「法人設立で安心感が生まれたのだと思う。受け皿になれるよう、園地の確保や年間を通した仕事の充実などを進めたい」と意気込む。
21年10月には、西予市蔵貫地域でもかんきつの農事組合法人「楽蔵」が発足した。地域で要望があれば、作業を請け負うことなどを想定。県南予地方局の池内温担当係長は「他産地からの注目度も高い。産地維持策の一つとなるように後押ししたい」と話す。