[論説]食育白書 行動変容を農業理解に
白書が特集したのは、「新たな日常やデジタル化に対応した食育の推進」。昨年11月の意識調査を紹介し、コロナ下で、家庭での食生活が大きく変わったことを伝えた。
コロナ拡大前と比べて、「自宅で食事を食べる回数」が増えたと答えた人は4割、「自宅で料理を作る回数」が増えたのは3割に上った。特に20、30代ではそれぞれ5割、4割とさらに多かった。若者世代は青果物を食べる量が高齢世代に比べて少ないことから、「大人の無関心層」と呼ばれる。改善が課題とされていただけに、食生活の変化を、食や農業への関心を高め、国産を選ぶ行動変容につなげる好機としたい。
食育のために、デジタル技術を活用している実態も明らかになった。2割強の人が利用しており、動画で料理レシピを視聴しているのは9割、交流サイト(SNS)でレシピや食の情報を収集している人は6割に上った。
中でも、SNSで手軽な料理を紹介して人気を集めるのがJA全農のツイッター「日本の食を味わう」だ。といだ米の上に新タマネギを丸ごと載せて炊飯する炊き込みご飯、牛乳とヨーグルトと砂糖を混ぜるだけの簡単ラッシーなど反響を呼び、フォロワー(登録者)数は25万に上った。消費行動を分析し、国産の魅力をアピールする。今後も食のデジタル利用が増えるのは必至で、こうした人気SNSの手法を参考にしたい。
学校における食農教育も改善傾向がうかがえた。公立小・中学校の栄養教諭の配置は6843人、給食における地場産物の使用割合は56%とそれぞれ過去最高になった。
コロナ下で中止していた農業体験を再開する学校も増えている。参考にしたいのが、JAグループ和歌山の取り組みだ。食農教育の表彰制度を設けることで、それぞれの学校や児童が工夫を重ね、自ら開墾から販売まで行う例も出てきた。「農業は自分で考えて取り組むのに最適な教材。失敗も多いが良い経験」と学校側は手応えをつかむ。一般的に児童は植え付けや収穫だけ、管理は農家任せという体験が少なくないだけに、工夫を凝らす必要がある。
白書では食料安全保障に絡めて食育を取り上げ、農業や食料自給率向上の意義を「自分事」として捉え、行動につなげることが重要と指摘する。食の行動変容を農業への関心を高める契機にしよう。