飼料用米の増産 きめ細かな技術指導を
配合飼料の価格高騰は、過去に経験したことのない水準に達している。直近の5月の工場渡価格(速報値)は、全畜種加重平均が1トン7万6620円で、1年間に15%(同約1万円)値上がりした。10年前に比べ33%(約2万円)高い。特に今年に入ってからの急騰が目立ち、畜産農家の経営を圧迫している。
主要な飼料原料のトウモロコシは今年4月、約8年ぶりに1ブッシェル(約25キロ)7ドルを突破。南米産の作況悪化の懸念や、米国内の在庫率低下見通しが強まったことなどが要因だ。現在は下がり基調だが、依然高い水準で推移している。
特に注視すべきは需要の増加だ。中国の養豚は、2018年に発生したアフリカ豚熱による減少から回復が進む。17年末に4億3325万頭だった豚が、19年8月までの1年間に1億6000万頭減ったとされる。現在は増加してきており、今後も生産拡大が続けば、需要の面ではトウモロコシの国際価格が下がる要因は見えにくい。安定して調達が見込める自給飼料として、飼料用米の重要性がますます高まる。
飼料用米は、作付面積では17年産の9・2万ヘクタール、生産量では16年産の51万トンをピークに減り、20年産は7・1万ヘクタール、38万トンだった。飼料業界団体は年間約130万トンが使用可能とみており、需要に応じた安定的な供給を求めている。また、農水省の試算では、潜在的な需要量は、畜産物に影響なく与えられる水準で見積もって、牛、豚、鶏で合計451万トン(19年度時点)もある。増産を受け止める余地は大きい。
政府は30年度までに、飼料用米を70万トンに拡大する生産努力目標を掲げる。実現の鍵を握るのが所得の確保である。それには、手間をかけず、低コストで、10アール収量を上げなければならない。政府も、担い手の飼料用米の生産コストを25年産までに5割削減することを目指す。
手段の一つが多収品種の拡大だ。20年産では作付面積の56%に当たる4万ヘクタールで栽培された。多収米生産のメリットを高める技術面の支援が必要だ。また追肥を行う幼穂形成期の見極めをはじめ、天候の推移などに合わせたきめ細かな対応が求められる。JAの営農指導員や都道府県の普及指導員との連携が重要だ。
政府は、飼料用米の生産者が主食用米と遜色のない所得を確保でき、安心して生産を続けられるよう長期的、安定的に支援すべきである。