[論説]24年農政の展望 重要局面に危機感持て
政府は昨年末、肥料高騰対応を盛り込んだ食料安全保障大綱の改訂とともに、基本法改正の方向性と関連4法案の国会提出を矢継ぎ早に示し、「農政を抜本的に見直す」(岸田文雄首相)姿勢を明確にした。高齢化と人口減少、有事の国際秩序による食料争奪など国内外の情勢を踏まえ、国内調達が着実に進むよう生産基盤の確保を急ぐ構えだ。
今月下旬召集の通常国会で政府は、24年度当初予算の審議に着手、3月中の成立を目指す。食料安全保障の確立に向け、農林水産関係費は2兆2686億円と4年ぶりに増額した。畑地化促進へかじを切る一方、転作助成に当たる水田活用の直接支払交付金を減額している。
食料安保の「一丁目一番地」は国内生産の増大と調達強化に他ならない。「日本農業の改革元年」を掲げる坂本哲志農相は、農政が目指す方向性とその財源の裏付けを明確に示すべきだ。
予算成立が見込まれる3月に、政府は基本法の改正案を提出。条文づくりなど作業が今後、急ピッチで進む。政府・与党内の議論では不測の事態への政府対応を定め、関連法案に結び付く一定の成果はあったものの、多様な担い手、農業インフラの整備など残された課題もあり、詰めの議論を注視したい。
また、関連法案で政府は食料有事対応、スマート農業振興と並んで農地関連法の改正も目指している。農地の総量確保に向けて国が関与を強めるのは当然だ。農地を所有できる法人の出資規制緩和も盛り込まれており、長年地域農業に取り組んできた関係者に悪影響が及ばないよう、適切な制度運用を求めたい。
基本法の国会審議と並行して食料・農業・農村基本計画の検討も始まる。食料安保のバロメーターとなる食料自給率を高めるため、農地をこれ以上減らすことはできない。市町村の「地域計画」づくりを進め、着実に生産基盤を維持・増大させるとともに、新たな数値目標の実現へ実効性ある具体策が欠かせない。
国会は冒頭から自民党派閥による政治資金問題を巡り、激しい論戦が見込まれる。政治改革は待ったなしの課題だ。能登半島地震で甚大な被害を受けた被災地への支援は一刻を争う。国民の生命と財産、基幹産業を守るため、与野党が一致協力し、迅速に対応すべきだ。