[論説]物流改革元年 慣習見直し供給網守れ
24年問題に対応しようと農水省は、昨年末に坂本哲志農相を本部長とする物流対策本部を設けた。地域や品目を超えてあらゆる課題や対策を共有し、改善を加速する。
規制強化を前に、自主的に物流改善に取り組む行動計画を作った団体・事業者は、政府によると103(23年12月末現在)に及ぶ。自動車、建設などの業種が網羅される中、食品に関する業種の作成数が特に多い。全国団体から個別事業者まであり、危機感の高さがうかがえる。
農業関係では、青果や花きの市場や各品目の全国団体の他、ホクレンや熊本県のJAもあり、大消費地から遠い地方ほど対応を急いでいる。
改善の要となっているのが、運転手の荷待ちや荷役時間を2時間以内に縮める「2時間ルール」への対応だ。まずは、実際に現場でかかっている時間の把握から始めたい。慣習として運転手が担っていた荷役などは「付帯業務」として対価を払うか、産地や市場、小売りなど荷物を集散する段階ごとで分担する体制の整備が必須となる。
荷待ちや荷役時間を減らすには、トラックの入場時間などの情報共有や、パレット化など荷物を積み込みやすくする事前準備が必要だ。
長野県の青果卸・R&Cながの青果は、トラックごとに荷ぞろえを事前に済ませておく専門チームを組織した。運転手が市場内に点在する荷物を集めて積み込むまでの時間に着目。集積場所を設けて出発2時間前までに荷物をそろえておき、運転手は積み込むだけにした。これまではトラックの出発までに2~4時間かかっていたのを、半分に短縮できたという。時間外労働時間の規制強化は、働き方改革の一環だ。運転手の負担を減らす工夫だけでなく、生産者やJAも無理をしない供給網を築く必要がある。
輸送や荷役にかかる費用の上昇を踏まえた適正な価格形成も欠かせない。供給網の川上の生産者から川下の消費者までの対話が、一層重要となる。消費者が納得する価格水準で折り合いを付けるには、産地での荷姿変更や選果基準、規格の簡素化などコスト削減も検討する余地はある。
気象条件に左右される生鮮農産物を定時、定量で届ける物流の価値は、もっと評価されていい。安値の裏で誰かにしわ寄せがいくような仕組みは今こそ正さねばならない。