[論説]男女共同参画の壁 変革は多様性重視から
JAグループは第29回JA全国大会の決議で、女性比率を①正組合員30%以上②総代15%以上③役員15%以上──とする目標を掲げた。昨年7月時点でいずれの目標も未達のJAは239と、全JAの4割に上る。女性役員が1人もいないのは、5道県78JAと参画が進んでいない。
ジャーナリストの浜田敬子氏は、日本農業新聞の「メッセージ JA一歩前へ」企画で、「実力や資質があれば登用する――。そんな考えでは、100年たっても変わらない」と指摘した。諸外国で競争力、成長力のある企業は、女性登用を義務付けるなど、多様性が担保されているという。
一方、JAの常勤役員の女性比率は極めて低い。年配の男性だけが意思決定権を持つ組織は、女性に限らず若者などの多様な人が意見を言いにくく、静かに進行するリスクに気付きにくい。こうした組織には、職員や組合員の中に諦めの空気が漂っていないだろうか。特に、女性がほとんどいない会議では「発言するだけで目立ち、変革に向けて率直な意見を言えない」(JAの女性理事)といった声も相次いでいる。だからこそ、一定程度以上の女性登用が必要だ。そうした環境を長年、放置しておいて、トップ層がいくら「変革を」と呼びかけても、風は起こらない。
また、共同参画の場において「女性ならではの視点」「きめ細かい女性の声を」という言葉にも注意したい。女性という役割を一方的に押し付けることになりかねず、その人らしさを発揮できない。
「理事になりたいという女性がいない」という悩むJAも多い。数少ない枠しかなくしかも失敗したら、と二の足を踏むのは当然だ。まずは誰もが意見を言いやすい、風通しのいい環境をつくろう。
JA面の「女性参画×JA ダイバーシティへ」では、現場の女性理事から「組合員も職員も女性は男性の数倍努力しないと地位を上げられない」という声も出た。同感だ。さまざまな声を組織運営に生かすことが、生き残れるJAにつながる。
農業農村がかつてない危機に直面する今こそ、実践の時だ。若手職員の離職や採用難などの課題解決にも、多様性の配慮は大きな鍵を握る。今年は30回目の全国大会がある。男性優位の社会はもう終わりにしよう。