鹿肉やイノシシ肉など、ジビエ(野生鳥獣の肉)を生かした料理をビュッフェ形式で楽しめる、全国でも珍しいレストランが千葉県君津市にある。猟師工房ドライブインだ。ジビエを使った料理は常に10種類以上を用意。2024年度は年間で7万人が訪問し、ジビエに興味を持つきっかけとなっている。
「小売りに転換しないといけない」。ジビエの処理・販売事業を手がける同工房の運営会社TSJ(奈良市)の代表、仲村篤志さん(46)はジビエ業界の現状をこう話す。
同工房で扱うジビエは千葉県と奈良県で捕獲されたもの。同社は猟師が捕獲した野生鳥獣を回収し、処理加工施設で解体・精肉する体制を敷いている。
解体・精肉といったジビエの処理事業は参入障壁が低い一方、飲食店など販売先の確保が難しく、ダンピング(不当廉売)で値崩れが起きてしまう。仲村さんは「加工品という形で(消費者に直接)販売するため、川上から川下まで手がけている」と説明する。

都心部から車で1、2時間。山あいにある同工房には、若い世代をはじめ幅広い客層が訪れる。4月末でオープンから3年目を迎えた。休日は42席全て埋まることもある。
ビュッフェでは、鹿肉のハンバーグやイノシシ肉のきんぴらごぼう、キョン肉のカレーなどさまざまなジャンルの料理を味わえる。ジビエを身近に感じてもらおうと、レシピは家庭で再現できるように工夫。店内ではジビエの加工食品や鹿の角で作ったアクセサリーなども販売する。
「ジビエのビュッフェや土産物を通じて、中山間地域の鳥獣被害を知ってほしい」と仲村さん。「自分たちが食べる食材の生産現場で、何が起きているのか知ることは大事。都心部の人がジビエを食べて需要が増えれば、ジビエ事業が持続可能になる」と訴える。
(岸康佑)