[論説]各地で頻発する地震 命を守る備え普段から
静岡県から宮崎県にかけた広い範囲での発生が懸念される南海トラフ地震は、100~150年の間隔で起きている。1946年の昭和南海地震から78年が過ぎ、発生の恐れは高まる。
内閣府中央防災会議によると一部で震度7、広い範囲で震度6強から6弱の強い揺れとなり、関東から九州の太平洋沿岸地域で10メートルを超す大津波が襲来、死者は最大32万人、国民の多くが被災者になると想定する。
台湾で3日に発生した震度6強、マグニチュード7・7の地震は、南海トラフ地震を引き起こすフィリピン海プレートと、ユーラシアプレートの境界付近で発生した。能登半島地震を若干、上回る規模だが、日本からの距離なども踏まえ、気象庁の専門家会議は「データから(南海トラフへの)影響は見られない」と判断した。宮崎県での震度5弱の地震も、震源は南海トラフ地震の想定震源域から10キロほど離れており、こちらも「影響はない」とみている。
ただ、今年は8日までに震度5弱以上の地震が国内で22回発生し、前年同期(1回)を大幅に上回る。特に南海トラフ地震による大きな被害が想定される東海地域は、震度5弱以上の地震が2007年以降起きていないだけに、警戒が必要だ。同庁は「南海トラフ地震は、いつ発生してもおかしくない」(地震火山部)と警戒を呼びかける。
能登半島地震などの大規模な地震が発生するたびに、避難所の収容力やプライバシーの問題、トイレなどの衛生面での課題が挙がっている。
今回の台湾地震は、過去の教訓を踏まえ早期に避難所が設置され、プライバシー確保のパーティションや、折り畳みベッドなどが準備され、注目を集める。民間団体と行政が日頃から連携し、災害時に備えた訓練の積み重ねが奏功した。参考にしたい。
自治体の防災計画を改めて見直し、自らの命を守る「自助」、地域で助け合う「共助」、自治体による「公助」が欠かせない。避難所での生活が少しでも快適になるよう、プライバシー対応や清潔なトイレの設置など、必要とされる設備の準備を急ごう。
地域に農業があることで、食料供給にとどまらずビニールハウスが一時的な避難場所となるなど、多くの命をつないだ。起きてからでは遅い。今から備えを強化しよう。