[論説]大豆増産の課題 国産化へ「本気度」示せ
国産大豆の2023年産生産量は約26万トン。豊作傾向で前年より増えたものの、ここ20年間の作付面積はほぼ横ばい。食用大豆需要に占める国産の割合も23%(22年)にとどまる。産地が増産に踏み切れない背景にあるのが、収量の不安定さだ。10アール当たり平均収量は全国で159キロ、都府県は132キロと振るわない。天候不順による年ごとの変動も大きい。
収量だけではない。国産大豆取引の建値となる収穫後入札の結果を見ると、23年産価格は過去10年で最安水準にある。農水省によると、大豆の10アール当たり販売収入は3万円程度。畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)などで下支えされるが、十分ではない。大豆は新規作付けや適期収穫のために農業機械が必要だが、導入を見送る生産者は多い。
ウクライナ危機などを経て、輸入大豆の価格が高止まりする中、国産を求めるメーカーは多い。同省がとりまとめた実需者アンケートによると、28年度の国産大豆の需要量は22年度実績(約23万トン)比で27%増えると見通す。
ただ、実際には「国産大豆は供給能力に懸念がある」(中堅納豆メーカー)として、調達に結びつかないケースが目立つ。納豆や豆腐で原料を切り替えれば、商品ラベルを変更する必要があり、負担も増えるためだ。輸入品を含めた在庫は潤沢にあり、国産の供給量が安定しなければ、本格的な切り替えは難しいという実情がある。
実需を巻き込み、安定生産に向けた動きを加速させたい。農研機構は大豆の極多収性品種を発表した。東海から九州での栽培に向く「そらたかく」と東北南部から北陸向けの「そらひびき」で、現地試験では既存品種に比べて2~5割多収が見込める。先行して育成した他品種を含め、都府県での普及を期待したい。
政府は、30年産の大豆収穫量を34万トン、作付面積を17万ヘクタールにする目標を掲げている。既に面積は23年産で9割に達するが、自給率向上、食料安全保障への関心の高まりを受け、政府の“本気度”を示せるかが焦点となる。
次期食料・農業・農村基本計画では、小麦とともに「作付面積の拡大に関する意欲的な目標を設定していく」(坂本哲志農相)とするが、実効ある施策を打ち出せるかが鍵だ。国産の安定供給に向けた環境整備が求められている。