22年産米の転作 将来展望開ける選択を
農水省は、22年産主食用米の適正生産量を675万トンと設定。21年産では前年産比で6・3万ヘクタール作付けを減らしたが、22年産ではさらに約4万ヘクタール(3%)の削減が求められる。新型コロナウイルスの感染や米在庫の状況によっては「深掘り」も必要になる。
21年産で過去最大規模の作付け転換を実現したが、コロナ禍による需要減で米価が下落した。稲作農家の心中は複雑だろう。また転作拡大が続く中で、品目選びは難題だ。そこで日本農業新聞は「来年、何作る」と題した連載で産地の対応や課題を探った。
大豆は機械・設備への投資、飼料用米は収量向上、輸出用米はコスト低減、野菜は栽培面積が限られることなど品目ごとに課題がある。栽培実績、気候や土壌など地域の実情に合うことも前提だ。水田の利用方式でも、作業性を高めるには一定面積の集約化、連作障害の回避にはブロックローテーションが必要だ。
転作は地域単位での取り組みが大切で、話し合いは欠かせない。だが主食用米を減らすためだけの検討では、水田農業の展望が見いだせない。
米の需要量はコロナ禍以前から年10万トン程度減っている。高齢化・人口減少が続く中では、転作の拡大は今後も続くとみるのが妥当だろう。
どの品目をどのくらいの面積で、どういった水田利用方式で作れば、販売代金と助成金、コストを勘案し、地域全体の所得を最大化し水田農業の持続性を高められるか。そういった視点が重要だ。単年度での実現が難しい場合は、複数年度の計画策定が必要だ。
だが、地域の営農計画を話し合う集落座談会に人が集まらなくなったとの声が産地から聞かれる。農業者の高齢化や担い手の大規模化が背景にあるとみられる。まとめ役農家の引退や市町村の担当職員の減少などもある。このため地域の話し合いが不十分なまま、JA職員が個別訪問して転作拡大を依頼する場合が増えたとの指摘もある。
主食用米と転作作物ともに需要に応じた生産が必要だ。それには産地が取り組みやすい助成体系と必要な予算の確保に加え、地域の話し合いをどう促すかも鍵だ。政府にはその認識が必要だ。また22年度の水田活用の直接支払交付金を巡って、飼料用米の複数年契約加算などの見直し方針に戸惑う産地がある。理由を含め丁寧な説明と、現場の意見を聞くことが欠かせない。