危機の食品事業者 事業継続へ支援拡充を
調査は昨年秋、食品産業の経営課題を把握するため、製造業・卸売業・小売業・外食産業を対象に実施。今後3~5年先の事業方針では「現状維持」が、いずれの業種でも5割前後と最も多かった。
「廃業を検討」は小売りが23%、外食が14%で、他も1割を超えた。また経営上の戦略として重点的に取り組むことで「事業継続」を挙げたのは外食、小売り、卸売り、製造の順に多く、外食が45%、他は3割前後だった。消費者に近い川下の業種ほど「経営を続けるのに精いっぱい」といった状況がうかがえる。
食品事業者には中小企業が多く、経営者の高齢化が進展。事業の継続には事業承継を進めることが重要だ。調査では、事業承継に取り組む際の課題として4業種とも「資金が足りない」が最も多く、いずれも3割を超えた。次いで、「自社に合ったパートナーを探すのが困難」が、おおむね3割前後だった。
新型コロナの流行が食品事業者の経営を圧迫している。感染拡大第5波が始まったころの昨年7月、日本政策金融公庫が売り上げへの影響を聞いたところ、平年よりも減ったのは飲食業で9割、製造と卸売りで6、7割に上った。小売りも、売り上げが減った事業者の方が多かった。堅調だった家庭需要に一服感が出たことの影響だとみられる。
食品事業者は、産地と消費者の間に立って食料を安定供給する使命を果たす。消費者ニーズを産地につなぐのも役割だ。地方では、地元農産物の供給先であり、重要な雇用の場でもある。食文化の継承、観光客やインバウンド(訪日外国人)への特産物や日本食、郷土料理の紹介などにも貢献。農村の過疎化が進む中で小売店は大切な生活インフラとして期待され、経済的にも社会的にも役割は大きい。
新型コロナの新変異株「オミクロン株」により、感染拡大の第6波が襲来。まん延防止等重点措置の適用が27日から、34都道府県に拡大し、飲食店には営業時間の短縮などが求められ、取引先を含めて売り上げの減少が懸念される。原材料や燃油、輸送コストなどの上昇も食品事業者全体の経営負担になっている。
政府は、飲食店への協力金を含め食品事業者の事業の継続や承継の支援、コスト上昇の適正な価格転嫁の後押しなど、経営実態や感染状況に応じた機動的で、実効性のある対策を構築すべきだ。