女性組合長の誕生 当たり前の職場風土に
女性組合長が誕生したのは富山県JAなのはな。理事だった谷井悦子さん(76)が2月下旬の臨時理事会で選ばれた。谷井さんは「全力で職務に向き合う。JAなのはなをこれまで以上に明るい職場にし、みんなの力を最大限発揮できるよう努めたい」と意気込みを語る。同JA女性部長、県女性組織協議会会長も務め、県民に米消費拡大を呼び掛ける運動を展開するなど、谷井さんは積極的に地域やJAをけん引してきた。JAトップとしての活躍を期待し、応援したい。
JAグループでは女性の経営参画を促すため、JA役員に占める女性の割合を15%以上にする目標を掲げている。2021年の割合は9・4%で近年は順調に伸び、5年前と比べて約2ポイント増えている。
だが、「組合長」に限って見ると、全国でもあまり例がない。JA全中が昨年7月現在で調べたところ、ゼロだった。過去に広島県や鹿児島県のJAで女性組合長がいたが、他には聞いたことがないという。
今度こそ、JAなのはなの後に続く形で、女性組合長を増やしたい。地域の女性が利用しやすく、地域に開かれたJAにするためには女性の視点は欠かせない。何より女性がトップに就けば、JAや農業で働く女性にとっては「自分もいつか、あの人のように活躍したい」と意識の向上につながる。男女共同参画を進める原動力になるだろう。
第1次産業の林業や水産業の生産者団体では、女性トップが続々と誕生している。林野庁によると、宮崎県の西諸地区森林組合では女性の組合長が活躍している。水産庁によると、富山県の新湊漁業協同組合の組合長は女性だ。JAでいえば中央会会長に当たる県漁業協同組合連合会の会長や、全国漁業協同組合連合会の理事も務めている。
JAの女性組合長をどう増やすのか。欠かせないのは、JA上層部の理解だ。第一歩は、職場の働き方改革を進めて残業時間を減らし、誰もが働きやすい環境を整えたい。さらに役員の中に女性枠を設定し、女性の役員、組合長が当たり前に選ばれる職場風土をつくることが大事だ。
人口の半分が女性であることを踏まえても、女性組合長がほとんどいない現状は自然ではない。自己改革の完遂には多様性を尊重し、地域から求められるJAへ、イメージチェンジを図る必要がある。