
津谷良子部長は「子どもたちに、また作りたいと思ってもらえるとうれしい。地元にはおいしいものがまだまだたくさんあることを伝え、家族と一緒に食べて、国消国産や地産地消のきっかけにしてほしい」と笑顔で話す。
24年6月、部員所有の農園にトウモロコシの種をまき、同校の近所の畑にはサツマイモの苗を植えた。どちらも順調に成長していたが、トウモロコシはイノシシと思われる獣害に遭い収穫できなかった。津谷部長は「残念だったけれどそれも自然。農業をやっていれば、こういうこともあると子どもたちも分かってくれたかな」と、学びの機会と捉えている。
一方、サツマイモは10月下旬、無事、収穫できた。歓声を上げながら立派に育ったサツマイモを次々に掘り起こす児童たちを見て部員らは胸をなでおろした。
11月下旬、児童らと一緒にサツマイモを使って蒸しパンを作った。児童らは「サツマイモが甘くておいしい。もう1個食べたい」「簡単だからまた作りたい」と喜びをかみしめた。
「現在も元気に活動できているのは、歴代の部長さんたちの頑張りと支えてくれる部員、JAのおかげ」と話す津谷部長。これからも仲間たちと子どもたちの笑顔を励みに、食育活動を続けていく。

店内には秋田市などの管内産青果物を中心に、日本酒や菓子類、パンなども並ぶ。滝田翔子店舗責任者は「地元の野菜をはじめ魅力的な加工品も購入できる。気軽に立ち寄って好みのものを探してみて」と話す。
同市河辺のMond農園で代表を務める佐々木充さん(41)は、50アールで栽培した野菜を同直売所などに出荷している。佐々木さんの野菜は、陳列しようと売り場に出したコンテナから客がすぐさま手に取っていくほどの人気ぶりだ。
中でも出荷量が多く、売れ筋の主力が大玉トマト。大玉トマトが落ち着く冬季はダイコンやカブなどの根菜類、小松菜などの葉菜類を出荷する。
佐々木さんは、秋田市園芸振興センターの新規就農研修を経て就農し4年目。さまざまな品種を実際に作付けした上で、現在は厳選した品種を栽培している。「市場出荷されていない品種も含めて、食味の良さにこだわって選んだ」という。出荷する野菜には、味や調理のしやすさなどの特徴を書いたシールを貼り付けており、その野菜になじみがない来店者も興味を引かれて購入するようだ。
「鮮度が良く、よりおいしいものが並んでいることが直売所のいいところ。絶対においしいと思って作っているので、ぜひ手に取ってほしい」と佐々木さんは語る。今後は野菜を活用して、ドレッシングなどの加工品にも挑戦する予定だ。

部員は、先輩農家からの指導や青年部事業で培った栽培技術で、自信を持ってリンゴを生産する一方、生産者同士でリンゴを食べ比べ、互いに評価し合う機会はなかった。
そこで平良木亨部長は、栽培技術向上と同JA果樹の統一ブランド「銀世界」を冠した「銀世界りんご」のPRのため、部員同士で食べ比べをするトーナメントがあったら面白いと思いつき、昨年12月19日に 「銀世界りんご王者決定戦」を開催した。
トーナメントは、部員が持ち寄ったリンゴのサンふじを「おいしいかどうか」だけを基準に食べ比べ審査。勝ち残った生産者が「銀世界りんご」の王者となる企画だ。
審査員は地元高校生や県・JAなどの有識者ら。これからの地域農業を担う若手生産者とこれからの地域を支える高校生が交流し、「国消国産」の理解醸成などにもつなげた。
平良木部長は「栽培技術向上やニーズのくみ取りの他、未来の消費者である若い世代が国産の食べ物にもっと興味を持ち、生産者やJAと接点を持ってもらいたい。子どもを育てる大人世代になってからも国産・地場産の農産物を思い出し、食べ物を選んでもらえたらうれしい」と話す。

センターを2023年から管理運営する「豆加工の会」は、女性部の6人が立ち上げた。会長の山本嘉子さん(72)らメンバーは昨年12月4日に機器の試運転を行い、今季最初の豆腐作りを行った。
同会は会員制で、会費を機器メンテナンスや保険代に充てる。現在は村の約120人が入会。栽培したり購入したりした村産大豆や米を持ち寄り、豆腐やみそ造りに精を出す。自分で作れない会員にはみそ造りの代行サービスもある。
「自分の家で豆腐やみそをつくるのはハードルが高いが、村には入植者世代が苦労して確立した製法と技術、設備があった。仲間とコミュニケーションを取りつつ作るので、ここはいわば大潟村の冬の社交場」と語るのは、立ち上げメンバーの一人、宮川清子さん(60)。村内外の友人に、業務用機器で大量に作った出来たて豆腐やおからを分けて喜ばれるのも醍醐味(だいごみ)の一つだ。
最大で約400人の村内女性が豆腐やみそを造っていた30年前に比べると利用者は減少しているが、「近年は作り手が入植一世から二世、三世へとバトンタッチしたり、男性が力作業の手伝いに来たりしているのを見かける」と山本会長。時代の流れと共に形を変えながら、食の安全・安心を次の世代につなぐ村の文化となっている。