
総面積の86%が森林で「森と匠(たくみ)の村」を掲げる同村。ソバ、ホワイトアスパラガスやフルーツトマトなどの特産化を進めている。
東大生との新たなプロジェクトが発足したのは本年度。村役場の横山貴志地域振興係長らが、人づてに学生と知り合ったことがきっかけだ。建築を専攻する学生との縁が生まれ、さらに農業と地域おこしをテーマとするサークル「東大むら塾」の学生らともつながった。オンラインで意見交換を重ね、離れていても村のため何かできないかを模索した。
2021年7月に建築、デザイン、農業などに関心を持つ学生9人と連携。①農業まちづくり事業②パビリオン企画③地区施設の利活用――のプロジェクトを中心に、農山村再生を目指すことにした。役場では職員有志がプロジェクトチームを結成。学生や住民らでつくる実行委員会も立ち上がった。
具体的な事業内容として、「仮設の建物」を意味するパビリオンは地域住民と学生が作り、交流することなどを目指す。「農業まちづくり事業」では、村の基幹産業である農業をベースに、まちづくりなどに興味・関心のある学生に対応。農作業を手伝う学生の受け入れや、オンラインでの交流会などを行う。「地区施設の利活用」では、利用頻度が少なくなっている村内の集会場を住民や学生が気軽に集える空間に再利用できるようアイデアを出し合う。
新たな関係人口に
農業まちづくり事業で昨年10月下旬、村に2週間滞在した教養学部2年の宮島駿さん(20)は「オンラインで授業を受けながら毎朝、農作業を90分手伝った。人の温かさに触れ、話すことで村が好きになり、再訪したくなった」と話す。
農業体験を受け入れた同村筬島地区の長尾宝一さん(69)は「若い人が村に滞在することは良いこと。私たちが当然と思っている日常に学生が感動する姿に気付きをもらえた」と話す。プロジェクトを進める村外出身の若手職員に対しては「職員を知る機会が今までなかった。頑張りが見えて良かった」と、次年度以降にも期待を寄せる。
村は、厳冬期に学生を受け入れることも検討している。「できれば厳しい冬を体験してもらい、春からの農体験につなげたい」と横山係長。そして「今後の交流の形を学生と一緒に考え、発想を共有して町づくりに生かしたい。できれば卒業後もそれぞれが活躍する場とつながりを持ち、新たな関係人口を増やしたい」と語る。