山形、北陸 被害あらわ 田畑、家屋…濁流のむ
たまった雨水、稲沈む 「またか…」山形県川西町
「またやられた」。水田5・5ヘクタールを管理する山形県川西町の農家・近野昌信さん(81)は、ほぼ全てが水に漬かった田を見つめながら、無念そうな表情を浮かべた。
水害は今回だけではない。2019年10月の台風19号でも田が浸水した。ただ、前回とは違い収穫前だけに「稲が水に漬かる時間が長ければ長いほど悪い影響が出てしまう。一刻も早く水が抜けてほしい」と切望した。
同町がある置賜地方は、3日から断続的に雨が降り、4日午前7時までの24時間雨量が観測史上最大となる306ミリ。近野さんの農地は、最上川のすぐそばで地域の中でも低い場所にある。このため、降り注いだ雨水が一気にたまってしまった。影響は自宅にも及び、床下浸水する被害が出た。朝から家族総出で復旧作業に追われた。
「安全に暮らし、農業できる地域でなければならない」と願う近野さん。3年前の被害を教訓に、農地の排水機能を高めるため、国に排水機などの新設を要望し続けている。「また水害に遭う可能性は十分にある。被害を最小限に抑えるには排水機は必要不可欠だ」と訴える。
最上川氾濫、果樹襲う 「希望失う」山形・JAさがえ西村山
【山形・さがえ西村山】大雨によって、最上川が河北町で氾濫した。JAさがえ西村山管内では、水田や野菜畑、果樹園が冠水するなど大きな被害が出た。JAや県、管内1市4町などは、4日朝から果樹園や水田などを巡回、被害の確認を急いだ。
4日午後3時現在、河北町で判明している被害面積だけで約121ヘクタールに及ぶ。溝延地区の最上川と寒河江川が合流する地点で氾濫が発生。周辺に密集するサクランボや西洋梨、リンゴやブドウなどの果樹園の他、野菜や特産のエダマメ「秘伝」の畑など約30ヘクタールが濁流にのまれた。周辺の道路には農家らが次々と集まり、沈痛な表情で状況の推移を見守った。
収穫間近の桃や水田が濁流に浸かった押野栄さん(76)は「一昨年に次ぐ被害にがっかりだ。桃は、果実を覆う産毛に泥が絡み付く。水洗いできず、商品価値をなくしてしまう。夢も希望も失う」と肩を落とした。
寒河江市平塩地区では最上川沿いの果樹園や野菜畑、水田など約2ヘクタールが濁流にのまれた。水稲が広範囲にわたり流失。出穂期を迎えた稲が倒伏して大きな流木が絡まり、無残な姿をさらしていた。
JA施設、米倉庫 浸水相次ぐ 新潟・村上市 胎内市
新潟県では3日からの集中豪雨で、施設への浸水や田畑の冠水、土砂崩れなど、各地に被害が発生している。
村上市神林地区のJAかみはやし本所では職員が朝から、浸水した施設内で排水作業に追われた。本所敷地内にある配送センターでは、肥料の下に敷いたパレットの半分まで水がきていた。
村上市内の農業法人の米倉庫では、床上浸水で保管していた米が水に漬かったという。法人では「暑い中なので品質が心配だ」と不安を語る。
胎内市農林水産課によると、水田でのり面の崩壊、田畑の冠水、用排水が土砂で埋まる、農道の路肩崩壊など被害が多岐にわたっている。
農地の崩壊は中山間地で多く発生し、平場の水田では冠水が多い。川が土手を越して水害発生の危険があり、U字溝の排水路が詰まってあふれているなどの状況が多数発生。「詳細は調査中」とした。