環境に配慮して育てた青果物を売り込む機運が高まってきた。農水省は、温室効果ガスを減らして栽培した農産物を「三ツ星」ラベルで表示する制度を開始。加工分野では、有機野菜の袋サラダ製造を強化する会社も出てきた。「みどりの食料システム戦略」に呼応して生産者の工夫を可視化し、付加価値を発信する。
ラベル表示で選ばれる店に
同省は2022年7月に施行した「みどりの食料システム法」に基づき、環境に配慮した農業生産を支援する。環境に優しい農産物を分かりやすく発信する「見える化ラベル」を作成。23年度、販売実証に取り組んだ。
米、野菜、果実、茶など、23品目が対象。慣行栽培と比べた温室効果ガス削減率に応じ、三ツ星で評価する。スーパーや飲食店など、ラベルを表示した農産物の販売実証には、24年1月時点で累計689カ所が参加した。
スーパー大手のイトーヨーカ堂は1、2月、直営農場のセブンファーム東京立川で育てたホウレンソウにラベルを貼り、6店舗で販売した。作物残さのすき込みや緑肥施用により、10アール当たりの温室効果ガス削減率を慣行栽培と比べて26%削減。「三ツ星」を獲得した。
ファームの各農場はJGAP(農業生産工程管理)認証取得に取り組み、農薬や肥料、燃料・電力など温室効果ガス排出に関わる情報を記録している。ファーム東京立川の平野健太郎農場長は「手元にあるデータで削減率を算出できて負担はないし、記録するだけだった項目を販売に生かせるようにもなる」と喜ぶ。
セブンファームの久留原昌彦社長は、「今後は、環境配慮が消費者の購買基準となる。乗り遅れると選ばれるスーパーになれない」と分析。三ツ星ラベルを、消費者に訴求する手段として期待する。
実証を踏まえ同省はラベルをリニューアルし、3月から運用を本格化。みどりの食料システム戦略グループは「どれが環境に優しい商品か分からないという消費者の声に応え、生産者の努力が分かりやすく伝わる印として広めたい」と話す。
加工の分野は有機野菜注目
加工の分野では、有機野菜を前面に出した商品化が注目される。カット野菜を製造するフレッシュフーズ(札幌市)は、同法に基づく「基盤確立事業実施計画」の認定を受けて今秋、有機野菜サラダを製造する新工場を、千葉県に建設する。
新型コロナウイルス禍で外食需要が減り、新しい看板商品として小売り向けの有機野菜サラダを商品化。21年に本格販売を始めた。宝蔵隆志代表は「生産者と信頼を築いて安定調達を進め、北海道の取引先からの反響にも手応えを得た」と、大都市圏進出に踏み切った経緯を語る。
(橋本陽平)