2023年産米は、猛暑の影響で白未熟粒などの高温障害が全国的に多発した。米の歩留まりを示す等級も下がり、1等米比率(3月31日時点)は過去最低の61%まで落ち込んだ。大手米卸によると、精米時の歩留まりは平年から2%弱下がり、同じ量の精米を作るには、より多くの玄米が必要となっている。
このため米穀店では、玄米在庫の消化ペースが速くなり、不足感が強まった。米穀店で組織する日本米穀商連合会(日米連)が4~5月に実施した米穀店へのアンケートでは、8割弱の米穀店が在庫水準に不安を抱えていることが分かった。在庫不足で欠品が出る米穀店も相次いでいる。
調達環境が悪化したことも米穀店が在庫不足に苦しむ要因だ。同アンケートによると、「仕入れが減っている」とする米穀店が85%に上る。愛知県の米穀店は、「4月以降、卸からメニュー表が届かない時期がしばらくあった」とし、「そもそも調達先の業者に米がない」と打ち明ける。
米穀店らは銘柄の切り替えを飲食店に相談したり、「ご飯のお代わり無料をやめてもらう」(都内の米穀店)交渉をしたりと奔走するが、十分な追加調達が見込めない中、在庫の不足感は強まる一方だ。都内の米穀店は「今後も終売にする銘柄が増える可能性はある。客の好みに合わせた提案といった専門店の強みが失われてしまう」と苦悩する。
一方で、スーパーなど大手小売りで欠品が発生するケースは少なく、「仕入れに苦戦する米穀店がスーパーで米を調達している」とした声も聞こえる。
米の流通自由化から来年で30年。スーパーやドラッグストアとの競争激化で、23年産米の取り扱いを最後に店を畳む判断をした米穀店も少なくない。24年産の出来秋が迫る中、小林店主は「今年は量・品質ともにしっかりとした米が取れると良い」と願う。