
日本産扱い急増
これまで米の輸出は、高級な日本食レストランや百貨店など、富裕層向けの販売が中心だった。世界で生産される米の大部分が長粒種となる中で短粒種のニーズが限定的だったことや、業務用では競合する米国産中粒種などに比べて、価格が高かった背景がある。
ただ、近年は中間層向けの日本食レストランが増加傾向だ。新型コロナウイルスの世界的流行が明けて外食需要の復調が進んだ。米国産の不作や円安の影響で日本産米に値頃感が出てきたことを受けて、「新たに日本産米の取り扱いを希望する業者が急速に増えた」(大手米卸)という。
回転ずしが躍進

スシローの海外店舗では、粒の大きい日本産米を中心に使う。運営会社のフード&ライフカンパニーによると、日本と同じ品質のすしが現地でも手頃な価格で食べられるとして人気だ。例えば、台湾の店舗ではマグロやサーモンなどのすしを一律40元(2貫、約190円)で提供している。各国の店舗とも評価は高く、26年には403店舗まで拡大する見込みだ。
おにぎりも注目
日本のファストフードとして海外で注目を集めているのがおにぎりだ。アジア圏を中心に、欧米で専門店を開業する動きが活発化している。
パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスは21年、シンガポールの「DONDONDONKI」の店内でおにぎりの販売を始めた。気軽に日本産米のおいしさを楽しめるのが人気で、現在は6カ国・地域の37店舗まで拡大した。
おにぎりと並行して販売する家庭用の日本産精米も「おにぎりで食味の良さを知った客が買っている」(同社)と好評だ。同社によると、従来の日系スーパーよりも価格を抑えた商品提案が奏功し、富裕層から中間層の現地客まで広く支持を集めた。
輸出用が大半を占める新市場開拓用米の22年の作付面積は、7248ヘクタールと拡大が続く。一方、海外で日本産米を取り扱う業者からは「価格帯や銘柄の幅を増やしてほしい」とした声が聞こえる。海外の日本産米市場が活発化する中、現地需要に即した生産が、一層の輸出拡大の鍵となる。